第383話 追い出された2人

家へ帰って来た黎人達を玄関で火蓮が出迎えた。


「お帰りなさい、お疲れ様でした。翼ちゃんのお母さんもはじめまして」


挨拶をした後、火蓮は翼の事をおいでおいてして呼ぶと、内緒の話を耳打ちした。

それを聞いた翼は、ぱぁっと顔を明るくしてコクコクと何度も頷いた。


「火蓮お姉ちゃん! タイマーなったよ!」


リビングの方から元気よくアンナが叫んでいる。


「はーい! それじゃあ師匠と翼ちゃんのお母さんはご飯できるまで外に出ててくださいね!」


そう言って黎人と雲雀は火蓮と翼にいい笑顔で外に追い出されてしまった。


仕方がないのでエントランスの奥にある自動販売機などが並ぶフリースペースへ移動する事にした。


「さっきはありがとうね、黎人」


2人きりになってエレベーターの中で雲雀が黎人にお礼を言った。

先程の階級進化の化け物はとても雲雀の力が及ぶ相手ではなかった。


なので倒した魔法は黎人の力八割といった所だろう。

まるで本当のプリティバトラーの必殺技のように2人の力が合わさったような2つの魔法が交わったような演出も、翼とアンナが楽しそうに見ていたプリティバトラーのアニメを一緒に見た事があった黎人の機転を聞かせた演出であった。


「雲雀さんが教えてくれたんでしょう? 女性は立てる物だって」


「そうだったかね? ありがとう」


雲雀が黎人から飲み物を受け取った事で話が途切れた。

無音の中で缶を開ける音と自動販売機のコンプレッサーの音が静かに響いている。


そんな中、話し出したのは雲雀であった。


「芽衣亜からこれまで翼が置かれてきた状況は聞いたよ。それなのにさっきの笑顔、よくして貰ってたのが分かるよ。良い嫁さんを貰ったね」


「火蓮は嫁さんじゃないよ。俺は未婚だしな」


「な、だってさっきの雰囲気に奥に子供も居たじゃないかさ⁈」


「アンナは俺の子供だな」


「どうなってんだい!」


黎人に説明を受けて、雲雀はやれやれと言った様子で額をおさえた。


「アンタも奇想天外な人生だね。私も人の事言えないけどさ。でも、間違いなく家族なんだろうさ。翼もその一員なんだろうね。離れていた私より絆が強そうだ」


苦笑いで話す雲雀の言葉に黎人は首を振った。


「俺達と翼の関係なんて数週間のもんさ。それよりも、翼はずっと雲雀さんを思ってきた。それを雲雀さんが否定しちゃいけない」


雲雀や家族の話を楽しそうにする翼の姿を知っているからこそ、黎人は翼に強い口調で言った。


「言うようになったじゃないか。人の気持ちなんか分からないって言ってた小僧が」


「雲雀さんに散々教えられましたからね。肝心な所で失敗しましたけど」


「さっきの話かい? 恋愛に関してはもうちょっと指導してやる必要があるね!」


あえて自分を下げる為に自嘲した話題を出した黎人の気持ちを理解して雲雀は落ち込んだ雰囲気から一転いつものように豪快に笑って黎人の背中を叩いた。


ちょうどいいタイミングで黎人の電話に火蓮から電話がきて2人は家に戻る為にエレベーターへと乗り込むのであった。




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あとがき 


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