第382話 終わり
黎人と雲雀が『デュアル・ミキシング・シャイナー』と叫びながら放った魔法は階級進化した翼の叔母、野田健太郎、健二が混ざった物を跡形もなく消しとばしていく。
プリティバトラーというアニメは美少女の激しい肉弾戦も魅力の一つである。
対抗して見せるなら雲雀は自分の得意な肉弾戦でボコボコにして見せるという手段もあった。
勿論相手は階級進化していくのだから《SSS》の強さになる。
そうなると雲雀は1人で敵うはずはないのだが、黎人がサポートすれば何とかなるかもしれない。
しかし、現実はアニメのように綺麗ではない。
化け物の姿になっていようと相手を倒そうと思えば骨は折れ、血は飛び散る。
黎人の弟子として冒険者を目指していると聞いていても、雲雀は娘にグロテスクな物を見せたいと思わない。
プリティバトラーより強いと見せるだけなら、女児向けアニメの敵より悍ましい姿の化け物を必殺技で倒すだけで十分である。
元が3人の人間だった階級進化した化け物を『デュアル・ミキシング・シャイナー』が消し飛ばしてしまう。
シャイナーと言っているもののアニメのように浄化の光などではなく、ただの高火力な火魔法である。
階級進化した化け物にも関わらず、一瞬にして魔石を残して消し炭になってしまうのであった。
いつもはGクラスダンジョンの動物のような魔物を相手にしている翼は、巨大な正真正銘の魔物が一瞬で倒されてしまった事に驚いて目を点にした。
「どうだい? お母さんはプリティバトラーより強かっただろ?」
化け物を倒し終わった雲雀が笑顔で翼のほうへ振り返り手でVサインを作って話しかける。
翼は驚きでどう反応していいのか分からないと言った様子であったがゆっくりと頷いた。
「これから冒険者になるから言っとくがな、あの化け物は普通の冒険者では倒せへん。出会っても真似したらあかんで。まぁおいおい黎人が教えるやろけどな」
見てくれだけの化け物では無かったと、坂井が補足する。
勿論、黎人出なければ倒せないという余計な一言は言わない。
「お母さんと師匠、すごい!」
「そうだろそうだろ! 言ったろ? お母さんは強いんだよ」
豪快に笑う雲雀に翼がゆっくりと歩くとギュッと抱きついた。
「お母さん、おかえり……」
「ああ。ただいま、翼」
自分の体に顔を埋める翼を、雲雀は愛おしそうに優しく頭を撫でた。
「姉さん、後の処理はこっちでするさかいに親子水入らずでゆっくりして来たらええ。なあ、レイ坊?」
「そうだな、後は特課にまかせるよ。よろしくな、坂井。雲雀さん、レストランを用意しますから——」
「そしたら黎人も一緒に来な! なんだかいきなり2人だと小っ恥ずかしくてね」
坂井と黎人の提案する中、雲雀は恥ずかしそうに頬を掻きながら言った。
食い気味なのは本当に2人だとどうしていいか分からないからなのだろう。
「翼はお母さんと2人の方が良いんじゃないのか?」
黎人の質問に翼は雲雀に埋めていた顔を離して黎人を見ると首を横に振った。
「私は口下手だから師匠が居てくれた方がいい。それに、ご飯も火蓮さんのがいい……お母さんを、紹介したい」
「それじゃあ家でご飯食べるか」
それでいいのかと黎人は雲雀の方をチラッと見るが、雲雀も笑って頷いている。
「そしたら一般人は出てってください! あ、芽衣亜は特課やから手伝えや?」
「分かってるけどその後は労ってもらうからね! 隠してあるウィスキーがいいなぁ」
「なんで知ったんねん! まあええわ。ほな、姉さん達は楽しんでおいや」
目の前で消し炭になったボス達を見て、チンピラ達は抵抗のての字もなく特課の言う事に従っている。
坂井達に見送られ、帰り道に起こったトラブルは終わりを迎えたのであった。
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あとがき
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