第380話 父の死
野村健太郎の手下のチンピラ達は魔石と薬を使って人と魔物が融合したかのような姿へと変わった。
以前万里鈴の妹が使った魔石による鎧の武装のようにも見えるが、鎧というよりも禍々しく関節など人とは違っている者もいる。
しかし、姿を変える前に言った「魔石武装」という言葉から関連がある事は明らかであろう。
「黎人、黒やな」
「そうみたいだな」
坂井が先程までとは違う険しい視線で変身したチンピラを見ると黎人にボソリと言った。
新宿掃討作戦しかり、今の新宿の裏に愚者との繋がりがあると睨んでの事であった。
その予想が当たっていたようである。
「ふん! 今の時代は冒険者よりもこっちなのさ!」
坂井と黎人の様子を見て恐れたと思ったのか翼の叔母は自分は変身していないのに笑みを浮かべて話し始めた。
「戻って来なければ自分だけでも助かったのにねえ。夫婦揃ってバカで間が悪いね」
「あの人は関係ないだろ?」
「あれは私が仕送りの金に手を付けてた事に気がついてね、気づかなければまだ生きていられたかも知れないね」
「どう言う事だい!」
相手を侮り貶めるようにペラペラと話す翼の叔母の言葉に雲雀は聞き捨てならないと叫んだ。
「アイツはお前が翼の為に送ってくる大切なお金だから翼の事以外に使う事は許さないと怒ってね。うざいったらありゃしない。適当に話をはぐらかした後にアイツが寝ている間に私が当時使っていた痩せ薬アルツハイムをちょっと多めに盛ってやったのさ。そしたら効き目がバッチリでね、段々薬を求めて壊れていってね、そんで最後には中毒で死んじまったのさ」
翼の叔母は思い出し笑いをしながら話す。
その話を聞いて、雲雀の拳は血が出るほどに握られていく。
「アンタと離婚した事を後悔してたんだろうね。過去を見ることができる薬にはまり、大切にしていた娘も成長しているから認識できなくなっていったよ。そのおかげで私はやりやすかったけどね」
「そんな、じゃあお父さんは……」
死ぬ前に素っ気なくなっていった父を思い出し、翼はその真実に目に涙を溜めた。
聞くに耐えない。翼にこれ以上聞かせる必要はないと黎人が動き出そうとしたした所を、雲雀が手で制した。
「黎人、ここは私がやるよ。手を出さないでおくれ!」
「わかった。周りに邪魔はさせないからボコボコにしてやれ。何が起こっても坂井がどうにかしてくれる」
「他から情報が絞れれば姉さんの罪くらい闇に消したるけどな、娘の前って事は意識しときや?」
雲雀と黎人の会話にやれやれと言った様子で坂井は口を挟んだ。
意気揚々と詰め寄るチンピラ達を相手に、過去の最強達が動き出すのであった。
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あとがき
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