第379話
「お前は!」
そう声を上げた3人に指を差されたのは2人だった。
1人は勿論翼の母である雲雀。
翼の叔母が癇癪を起こしたようにキーキーと叫んでいる。
そしてもう1人は坂井、の横に居た4人の内1人。
野村健政。
野村健太郎の息子であり健二の兄である健政は2人に暴言を吐かれなじられているように聞こえる。
「裏切り者」などの単語が聞こえてくるが、3人が同時にキーキーと叫ぶので声が重なって何を話しているのかよく分からなかった。
その様子に健政は今は自分ではないだろうと苦笑いであった。
裏切り者という言葉に対しても健政と敵対したのは2人なのだからお門違いだと言える。
しかし、健政としてはまずい状況だと内心慌てている。
言っている事は三下だが、相手は魔石と薬の力で自分を新宿から追い出した奴らだ。
当時の健政の部下達は全員冒険者であったしステータスに関してもBクラスはあった。
だから新宿の裏を牛耳れていたいたわけであるが、それを壊滅させた訳の分からない力だ。
確かに味方に《黄昏の茶会》のメンバーや
だからこそ、不意をついた一斉検挙を狙っていたのだ。
今の状況に飛び込んできて場を乱したコスプレの2人を睨み、今の状況をまずいと思っていなそうな
健政のその様子を見て、相方の永井が背中をポンと叩いた。
「大丈夫だ」
「あの薬を舐めちゃいけない。なんの変哲もないクズどもが俺の手下を壊滅させるバケモノに変わるんだぞ?」
「それでもさ。お前こそ、坂井さんを舐めちゃいけない。それに、春風さんが居るんだから」
でも、話だけでは信じられないよな。と永井は健政に苦笑いで話した。
緊張感のない相方に頼れないとみて、健政はどうしたものかと1人思考を巡らせるのであった。
◆◇◆◇
雲雀は、娘との再会を邪魔する雑音に対して振り向くと、その言葉の内容を理解して眉をひそめた。
「あんた、義姉さんかい?」
姿は整形により全く違うが、自分をなじる言葉に面影を感じた。
「なんだい、気づかなかったのかい! まあ、私は綺麗になったからね。それよりも、契約違反だ! もう私達家族に関わらない約束だろう? 振り込みも止まってたじゃないか!」
「うるさい!」
公園に響くような覇気のある声で叫んだ雲雀の言葉に気押されて叫んでいた3人は静まり返った。
「あんたの悪事は全部聞いたよ! 裏切ったのはあんたの方だろう!」
雲雀が睨んだ事に翼の叔母だけでなく健太郎や健二もビクッと震えた。
「う、うるさい! 家族を見捨てたのはお前だろう!」
叔母の言葉に翼が不安そうに自分を見たのが分かった雲雀は優しく翼の頭を撫でた。
「そんな事はない! だからこうして私は戻ってきた!」
「でも、タイミングとしては一番空気を読めてなかったですよ。雲雀さん」
「細かい事言うんじゃないよ、黎人」
苦笑いで口を挟んだ黎人に雲雀は不敵に笑った。
「このくらい何とかなるだろ?」
「とりあえずゆっくり話す為にも早く終わらせましょうか」
雲雀と黎人の会話を聞いて、相手にされていないと分かったのか翼の叔母は顔を真っ赤にする。
「お前達、やっておしまいよ! ね、健太郎さん!」
「そうだ! やってしまえ!」
健太郎の言葉を聞いて、健太郎の手下達は薬を使って人あらざる物へと姿を変えるのであった。
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あとがき
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