第378話 再会
幼い頃の翼は大好きなアニメがあった。
「勇気の使者、プリティホワイト!」
「勇気の使者、プリティブラック!」
「世界を穢す者達よ」
「私達が、許さない!」
「「プリティバトラー!」」
翼はテレビの前に正座して女児向けアニメを真剣に見ていた。
「翼はそれ好きだねー」
「うん! めっちゃかっこいい!」
翼はお母さんの方を振り向くと目を輝かせながらグーにした拳を振り上げながら元気に答えた。
テレビでは正義のヒロインが名乗った後にビルから飛び降りて決めポーズを悪者に向かって決めている。
「お母さんもあれくらいできるんだよー、悪いヤツだってやっつけちゃう!」
「えー、ほんとにぃ?」
朝ごはんをテーブルに置いた後、あぐらをかいて座ったお母さんの足の上に翼は座ってまたテレビを見る。
「ほんとだよ。お母さん強いんだから!」
「じゃーこんどみせて!」
「んー、お母さんはもうやらないってお父さん達と約束しちゃったからなぁ」
「えー!」
翼のおねだりにお母さんは苦笑いではぐらかした。
それを見て翼はつまらなそうに反応を返す。
その後、翼はテレビを見ながらお母さんが口元に持ってきてくれるトーストを食べながら最後までアニメを見た。
「ねえ翼、お母さんとプリティバトラーどっちが好き?」
「プリティバトラー!」
考える暇なく答えた翼の答えにお母さんは顔を曇らせた。
「お母さんよりプリティバトラーのがいいの?」
「うーん、やっぱりお母さん!」
翼は言いなおしてお母さんに抱きついた。
「クソー! お母さんだって本気を出せばプリティバトラーより強いんだからね!」
「それじゃーおかたづけしたらプリティバトラーごっこしよう。わたしホワイト! おかあさんはブラックね!」
「はいはい、お皿あらったらね」
「はーい!」
翼は手を上げて返事をすると、お母さんの家事が終わるのを待つ間、アニメのエンディングをみながらテレビのヒロイン達と一緒にダンスを踊りはじめる。
プリティバトラーごっこ。
翼の昔の記憶で自分の隣でポーズを決める母親の姿と、目の前でポーズをキメる黒いアオザイの女性の姿が重なって見えた。
「お母さん?」
翼の呼びかけた言葉に、Mrs.チャイナマンブラックと名乗った女性はマスクを取って翼の方を向いた。
「ただいま、翼。ほらね、お母さんもプリティバトラーみたいに強いんだよ? 今から悪いやっつけちゃうからね!」
ニシシと笑いながら話すお母さんの笑顔を見て、翼は目頭が熱くなった。
「根に持ってたんだ……」
しかし翼は照れ隠しに、冷静にお母さんにツッコミを入れた。
Mrs.チャイナマンブラックが感動? の再会を果たすとなりで、Mrs.チャイナマンホワイトはギャラリーの1人に文句を言われていた。
「なんでおまえまで一緒になってやっとんねん! 特課が上手くやるねんから雲雀さんを止めやなあかんやろ!」
「私1人では無理だよ五郎〜!」
2人の痴話喧嘩に、周りの特課の人間は姿を現した後どうしていいか分からずに戸惑っている。
「痴話喧嘩はそれ位にしときなよ。芽衣亜にそのチャイナドレスあげるから痴話喧嘩は夜にやりな!」
翼を感動のあまり抱き上げた雲雀が坂井と芽衣亜にチャチャをいれる。
「雲雀先輩!」
「姉さんそれとこれとは話が別やがな!」
チャチャを入れられた2人は反論をしつつ、周りを意識してなんとも言えない顔で黙り込んだ。
「「「お前は!」」」
隠れていた面子が出揃った後、野村健太郎と健二、翼の叔母が驚きの声を上げるのであった。
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あとがき
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