第377話 参上!

黎人と翼はいつものダンジョンの帰り道、人に囲まれていた。


いつもと同じ帰り道だったのだが、いつもと違ってどんどん人気は無くなっていき、この時間ならいつもなら子供達が遊んでいる公園の辺りまで来た時には全く人がいなくなっていた。


「そろそろ出てきたらどうだ?」


誰もいない所に黎人が声をかけるのを翼は不思議そうに首を傾げる。


翼の疑問を解決するように、建物などの影からわらわらとガラの悪そうな見た目の人間が黎人と翼を囲むようにしてあらわれた。


黎人は数日前から誰かが後を付けていた事に気づいていた。

いつになっても仕掛けてこないので、こちらから行動を起こしたのだ。


勿論、タイミングよく人気が無くなるわけはなく、裏で仕組んだ事である。


しかし、それに気づいていないのか、黎人と翼を囲んだ人のなかから意気揚々と男が喋り出した。


「よく気づいたな! 俺に見つかったのが運の尽きだと思って過去自分がした事を後悔するんだな!」


「誰?」


男は黎人の反応に顔を真っ赤にする。勿論、黎人は男の名前が野村健二だという事は覚えている。

ステータスの高さから関わった人間を忘れるという事は少ない。


「別に覚えてなくたっていいわよ。どうせこれから死ぬんだから。久しぶりね、翼」


「誰?」


翼も黎人と同じように声をかけてきた女性に対して首を傾げた。

翼の場合は本当に誰か分かっていなかった。

その正体は実の叔母なのだが、翼に会わなくなってから金に物を言わせて全身を整形した為、翼は綺麗なお姉さんだと思っていて、叔母だとは分からなかった。


「一時期面倒見てやった恩も忘れるほどの馬鹿かい!」


「……叔母さん?」


「オバさんって言うんじゃないよ!」


声の特徴から疑問を持ちながらも叔母だと導き出した翼の言葉を、意味を取り違えて翼の叔母はヒステリックに叫んだ。


「2人とも、話が進まないだろう、こういう事はちゃんと説明してやらねば馬鹿には伝わらない」


健二と翼の叔母の話を引き継ぐように、腹の出た男が話し出した。


「春風黎人、貴様には色々と因縁があり、復讐をする事にさせてもらった。以前のように冒険者でないからと舐めない事だ。魔石と薬の力で冒険者など取るに足らん。その後、そのお嬢ちゃんには仕事を用意している。保護者の言う事を聞いて馬車馬のように働くといい」


自分達の力を疑うことはないのか黎人と翼を囲んだ輩はニヤニヤと笑っている。


まるで、数年前の焼き回しだ。


違うのは野村達がただのチンピラではなく新宿を牛耳る裏の人間になったという事。


ただ、それに大した意味はない。

なぜひとけがだんだん無くなっていったのか、野村達が仕組んだ訳ではない。


新宿ではないこの場所で野村達の権力の影響力はない。

ひとけが無くなったのは黎人がこの場所に誘い込んだから。


野村達を一網打尽にするように、野村達の数倍の人数の国家権力特課が準備をしている。

その為に規制をして人を居なくしたのだ。


タイミングをみて、特課が野村達を取り囲もうと動き出したその時であった。


「ちょっと待った!」


その出鼻をくじくように、大きな声が公園に響き渡った。


「誰だ!」


お約束に答えるように、野村健太郎が謎の声に向かって質問をした。


「アコギなヤカラは許さない! 正義の使者、Mrs.チャイナマンブラック!」


ビルの上から黒いアオザイ姿の女性が名乗りを上げる。


「ほんとに私もやらないといけないんですか? まあこんな格好しちゃいましたし、分かりましたよ、先輩……」


同じくマスクにこちらは白のスリットがセクシーなチャイナ服を着た女性が文句を言いつつ渋々ポーズを取った。


「同じく、正義の使者、Mrs.チャイナマンホワイト!」


2人の女性がビルから飛び立つと黎人と翼の前に着地をする。


「弱者を食い物にする悪人達よ」


「とっととお縄につきなさい!」


2人の女性は決めポーズを取りながら野村達に対して言い放ったのであった。





___________________________________________


あとがき 


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