第374話 発見?

「頑張ったな、翼」


「うん、やった」


黎人に頭をガシガシと力強く撫でられながら翼は嬉しそうにフンスと鼻息を吐いた。


今は、今日一日ダンジョンを探索して冒険者ギルドのロビーへ戻って来た所であった。

今日の探索では、翼は初めて黎人の力を借りずに1人の力で全ての魔物を倒してダンジョンを探索する事ができた。


勿論まだまだダンジョンの奥には強い魔物が居るのでGクラスダンジョンであっても1人で探索できるほどではない。


しかし、格闘術という剣などの武器を使う戦い方よりもステータスが成長して魔物が倒せるようになるまでに時間がかかる選択をした翼にとって、確かな成長を感じられるものであった。


「それじゃ今日はお祝いに焼肉でも食べに行くか!」


「焼肉!」


いつもは火蓮が作るバランスの取れた家庭料理を食べている翼にとって焼肉というのは特別に感じられた。


「せっかくだから幸地や楓達も呼ぶか。子供も連れてくるだろうし貸切にしてゆっくりお祝いをしようか」


「貸切!」


店を貸切にするという黎人の発言に翼は驚いて目を見開いた。


「大所帯だからな。他に迷惑がかかるといけない。他に予約が入っていたら貸し切るのは無理だが、できるなら相談してみような」


翼は、よく分からないまま黎人の言葉に頷いた。

黎人がする事に間違いはないだろうと考えるのを放棄した結果である。

今日の分の魔石を吸収した後、黎人と一緒に焼肉屋へと向かう。

少し前までは考えられなかった大勢での食事や祝われるという楽しい出来事に、この日の翼の表情は皆んなに分かるくらいに笑顔であった。




予約した焼肉屋へ黎人と翼が向かう道中、すれ違った車の中にいた人物がハッとした様子で振り返った。


「止めなさい! 今さっきの!」


「どうした? まだ店まで時間はあるぞ?」


女の言葉で車は停止し、それに驚いた男が苛立ったように女に話しかけた。


「さっき姪がいた気がしたのよ。警察に捕まったと思っていたけどそうじゃなかったのね」


「そんな姪を可愛がっていたか?」


「違うわよ。仕送りが止まったから責任をとって働いてもらおうと思ってたのよ。若ければ体でたんまり稼げるでしょ?」


女が同乗していた男に話しかけると男は納得がいったように二重顎を三重にしながら頷いた。


「可愛いければ健二に渡しても良いがな」


「健二君はすぐにダメにしちゃうでしょ? 薬漬けにして長く稼いでもらわないといけないからダメよ」


「まあ好きにするといい」


「だからちょっと人貸してちょうだい。探すから」


「それこそ健二に任せればいい」


「だからそれじゃ壊しちゃうって言ってるでしょ?」


知能指数の低い会話をしながら、車は目的地へ向けて再び走り出すのであった。



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あとがき 


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