第370話 お家のトラブル
翼が久々に1人で暮らしていた家へやって来ると、そこは入れないように紐が貼られ、数名の警察官が見張るように立っていた。
翼がどうしようかと迷っていると見張の警察官が気づいて声をかけてくれた。
「どうかしたかい? ここは捜査のために立ち入り禁止だよ」
翼はその言葉にどうしようかと隣にいる黎人の方を見る。
「すまない。そこの家の者なんだが何かあったのか?」
黎人の質問に警官はハッとした表情をした。
「何号室でしょうか? 実はしばらく家人が帰っていないうえ、先日荒らされた形跡があると管理人の方から通報がありまして、家の中を調べました所、違法な薬物が発見されたと言う事で捜査を行っているのです」
「えっと、一階の3号室」
翼の答えに警官は顔を険しくした。
「申し訳ありません。捜査を行っているのはその部屋でして、少しお話を伺うことはできますか? 上司を連れてきますので!」
警官の言葉に翼は顔を曇らせて黎人を見上げる。まさかこんな事になっているとは思いましなかったからだ。
翼の不安を取り除くように黎人は翼の頭にポンと手を置くと警察に話しかける。
「その前に連絡を入れてもいいだろうか?」
「電話も遠慮願いたく思います。証拠隠滅などをされてはいけませんので」
警官は翼と黎人が問題の部屋の関係者と言う事で容疑者として扱っているようであった。
その様子に黎人はため息をはいた。
このままこの警官と押し問答するよりは上司と話した方が話は早いだろうし、それでもどうにもならないようなら任意同行の時に警察署で知り合いを呼んで貰えばいい。
「わかった。それじゃあ君の上司に相談する事にするよ」
「では、連絡を取らせていただきます!」
警官が無線で連絡を取りやって来たのは2人の警官であった。
2人が来るまでの間、黎人と翼は逃げないように見張られていた訳だが、逃げないよと黎人は苦笑いである。
それでも翼は警察沙汰という不安に黎人の背後に隠れ、服の裾を不安そうに強く握っている。
やって来た警官2人は黎人を見て驚いた顔をした後1人は敬礼をした。
「な! 黄昏のゼロ!」
「春風さんでしたか! おい、健政!」
敬礼をとったのは特課所属永井直人であった。
「ああ、ひまわり達の同期の」
「はい、永井です! こちらの部屋の関係者だと伺いましたが春風さんが?」
「いや、俺の弟子の家なんだ。捜査内容は詳しく話せないだろうから坂井に連絡してくれるか? どうやら俺は今連絡を取ってはいけないらしい」
黎人の苦笑いに永井は慌てた様子で冒険者免許証を取り出して坂井に連絡を取った。
黎人にスマホの許可しなかったのは一応警察としての体裁を取ったからだろう。
その後、事情を聞いた坂井の大笑いする声が冒険者免許証の向こうから聞こえてくる。
「なんや、容疑者ゼロさん大丈夫かいな? おもろいし部屋の中見たいなら俺が行くまで待っとき。特課がおる時点でどんなか分かるやろ? すぐ向かうさかいな!」
一方的に連絡が途切れた後、サイレンと共に猛スピードの車に乗った坂井がやって来たのであった。
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あとがき
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