第369話 お母さん
翼は今、アンナと手を繋いでスーパーに向かっている。
火蓮が晩御飯の用意をしてくれている間に、足りなかった物を買いに出てきたのだ。
アンナは、翼の買い物のついでに遊んでいた公園に迎えに行った後であった。
「それでね、今度みんなでさっちゃんの家に赤ちゃん見に行くんだよ!」
アンナは公園で遊んだ内容や話した事を楽しそうに翼に話している。
友達がいない翼は少し羨ましく思いながらウンウンと頷いて聞いていた。
「でも良いなあ、アンナも妹が弟欲しいな。翠ちゃんの赤ちゃんも可愛いんだよ!」
「んー、それは難しいんじゃない?」
楽しそうに話すアンナの言葉に、翼はつい言わなくていい事を口に出してしまい、しまったという顔をした。
「やっぱりそうかな? 火蓮ちゃんと紫音ちゃんはお母さんにならないかな?」
無邪気に言ったアンナの言葉を聞いて、翼はアンナの事を凄いと思った。
翼は、意を決してアンナに聞いてみることにする。
「アンナちゃんは、お母さんが居なくて寂しいと思った事はないの?」
翼は最近、以前よりお母さんに会いたいと思うようになった。
今までの孤独な生活と違い、春風家の家族の温かさに触れた。
お母さんと同じ冒険者になると決めて、お母さんと同じ格闘術を習って、今まで押し込めていたお母さんに会いたいという思いが強くなった。
同じような境遇のアンナに、聞くべきではないと分かっていながらも、自分と同じ気持ちの人が居ると思いたくて、ついつい質問してしまった。
「寂しくないよ。だってママはアンナのここに居るし、火蓮ちゃんと紫音ちゃんがお母さんみたいだもん」
ママはここにいる。笑顔で胸に手を置いてそう話したアンナを見て翼は凄いと思った。
確かに思い出と共に心の中にいる。翼もそう思っている。しかし、思い出の中のお母さんの顔がだんだんぼんやりしていく事に不安を覚え、会いたいと考えてしまう。
確かに数週間一緒に過ごして火蓮や紫音は母のようだが、やはりお母さんとは違う。
「アンナちゃんは凄いね」
翼の言葉に、アンナはよく分からないと言うように首を傾げている。
翼は、この話で家に置いてきたアルバムを取りに行きたいと思った。
買い物をして帰った後、家に帰って来た黎人にその事を相談して後日アルバムを取りに久々に家に帰る事にするのであった。
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あとがき
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私も固定ポストにしてありますのでよかったらXで黎人と出会った頃のかわいい火蓮ちゃんの姿を見てあげてください。
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