第212話 面接

面接の日、5人の面接をまとめて行う訳ではなく、一人一人個別に行っていく。


面接の部屋に、テーブルがセットされ、支社長である昴、副社長のあさぎやチーフである青年蒼葉、それに、たまたま新潟に来ていた本社の社長である奈緒美も同席する事になった。


4人が座るテーブルの対面に一つの椅子が用意され、時間になると、受付の社員に案内された就職希望者が入室して来て椅子へと座った。



希望者の服装はスーツでは無かったが、冒険者にそこまで求めていないのでその辺りはスルーして面接に入った。



まずは、支社長である昴が社員の募集要項に間違いがないか、読み上げて、この条件で間違いがないかの確認から始まった。


次に、冒険者免許のランクの確認をする。


そして、履歴書に書いてある通りに前職の冒険者マネジメント会社での実績の確認に入った。


「それでは、履歴書の方には前職で指導冒険者として後輩の指導。とありますが、こちらの実績はどうなっていますでしょうか?」


「履歴書の通りに後輩に指導をしてました。前職では、トップの成績です」


昴の質問に、希望者が答えるも、意図した質問が返ってこない。


希望者としては《トップ》と自信満々に答えたのだが、それでは答えになっていなかった。


「では、トップと言うのはどれくらいでしょうか? その実績を伺いたく思います」


昴の質問に、希望者は自信満々に先月は魔石をどれだけ稼いだと言った話をする。


たしかに、Cランクの指導冒険者としては普通よりも少し多い。


しかし、昴の聞きたいことはそんなことでは無かった。


この希望者の就職希望はタソガレエージェンシーでの指導冒険者である。


そうなると、過去にどの様な冒険者を育てたかと言うのが重要になる。


「先月の魔石の取得数は分かりました。それでは、貴方が過去に面倒を見た冒険者はどの位の実績を残されていますか?」


「育てた冒険者の実績ですか?」


「はい。例えば、今回面接に参加している指導冒険者チーフの青葉は、東京で去年度にAランクのパーティを2組、Bランクのパーティを3組、ソロのBランク冒険者を2名育てております。勿論、Cランク以下の冒険者も育てておりますが、実績としてですので以下は省略させていただきます。それで、貴方の実績はいかがでしょうか?」


「お、俺はまだCランクですし、そのチーフと比べられては困ります!」


「青葉もCランクの冒険者ですが、彼は実績としてAランクを育てていますので、東京から、チーフとして新潟まで来てもらいました」


青葉が、Cランクだと分かった途端に、希望者は青葉の事を鼻で笑った。


「それは、後輩に抜かれたと言う事でしょうか? 私なら、もっと上のランクまで上がる事ができるでしょう。以前指導していた後輩がこちらの会社に移動して数週間でランクを上げたとか。ならば私もこちらに入れば今のCランクではなく、それこそAランクにもなれるかと思います。将来はそちらのチーフよりもいい実績を残せるかと思います」


後輩を育てる話ではなく、自身の成長の話をする希望者の話を聞いて、昴は書類にペンを走らせた。


「貴方のお話ですと、希望は指導冒険者ではなく一般冒険者かと思います。一般冒険者ですとスタートはCランク冒険者であろうとFランク冒険者に混ざって研修から始めていただきます」


「ちょっと待ってください!希望は指導冒険者です!」


「指導冒険者としての実績があればそれを考慮して試用期間からスタートしますが、今までの話では実績がありませんので、一般冒険者として実績を積んだ後、我が社の試験を受けて指導冒険者になる事を目指していただければと思います」


「な、俺は以前の会社ではエリートだったんだぞ?」


「タソガレエージェンシーでの採用基準ですとそうなりますので、当社での採用ですと一般冒険者になります」


こうして、就職希望者の面接は進んでいく。


よっぽどで無い限り、一般冒険者としての不採用はない。


勿論、試用期間を設けてではあるし、就職後に指導冒険者の指導を無視すれば首と言う事もあり得る。


今回の就職希望者は、指導冒険者としての希望者がいたものの、全員一般冒険者としての採用であった。


それを不服として断るかどうかは希望者次第である。

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