第210話 会議
「おい、どう言う事だ!」
アドベントアドバイザーズの古谷は、軌道に乗っていたはずの冒険者マネジメント会社の今の状況に、社員達に説明を求めていた。
つい先日までは、退職者は出るものの、新しい冒険者志望が入ってくる事で吊り合いが取れていた。
「それが、あの新しい冒険者マネジメント会社に冒険者を取られていまして」
新潟にできた新しい冒険者マネジメント
「何故だ!あそこはうちよりも給料が低いはずだろう!」
古谷はタソガレエージェンシーの募集要項を確認している。
記載を見る限り、アドベントアドバイザーズが負ける訳が無いのだ。
「しかし、うちの会社を辞めた冒険者から口ヅテで広がり、今ではうちの会社に来る志望者は居なくなっています」
「どう言う事だ?いや、きっと裏でよからぬ事をしているに違いない、そうだろ?お前らなら給料の良い仕事と給料の安い仕事、どっちを選ぶ?」
社員達の答えは給料の高い方であった。
会社の実情を分かっていない者だけが会社に残っている現状、正解の答えは出てきそうにない。
今集まっている会議に出席する様な人間は、ペナルティとは無縁の役員達で、今まで無理に上前をはねて潤ってきた職員である。
冒険者の代表として出席している社員も、同様である。
今アドベントアドバイザーズに残っている冒険者達は、ブラック企業の魔術にかかっている人達である。
搾り取る側、社員は上司の奴隷だと考え、うまい汁を啜って肥え太る社員
搾り取られる側、ブラックで、辛いと分かっていながらも、他を知らない為にこれが当たり前、カタログ表記だけ見せられて、この会社を辞めてもいいが、他の会社はもっと酷い。ここの会社はいい方だと洗脳されてしまっている社員。
比較的低ランクの冒険者に
そして、働いている期間が短いので、ブラック企業特有の洗脳に染まっていないからであろう。
「そうだ、お前達タソガレエージェンシーに潜入して奴らの不正を暴いて来い!いい情報を持って帰ってくれば今月の給料を上乗せしてやろう!」
タソガレエージェンシーはまだ初心者の冒険者を集めている段階だ。
うちの会社のトップ冒険者であるCクラス冒険者のコイツらは喉から手が出るほど欲しい存在だろう。
不正を暴いて全国的企業よりもアドベントアドバイザーズが素晴らしい事を知らしめれば、新潟以外の都市、東京からもうちの会社への入社希望は増えるだろう。
そうすれば他の地域に支社や子会社を出して、更にガッポガッポ稼げる訳だ。
古谷の妄想は膨らんでいき、会議の議題はどうやって社員の他社流出を止めて経営不審を脱却すると言うことから、ライバル会社タソガレエージェンシーの不正を暴く為の潜入作戦へとシフトチェンジしていくのであった。
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