第207話 新作の考案
紗夜は、本日はダンジョンはお休みして、新作の弁当のメニューを考えていた。
今回のメニューは、いつもと違って考えるのが楽しいメニューである。
それはなぜかと言うと、少々の赤字を覚悟したお客さんに喜んでもらう為のメニューであったからだ。
勿論、没案もでている。
お客さんに喜んでもらう為にあれもこれも詰め込みすぎた結果、量がとんでもない事になってしまったのだ。
なぜ、赤字覚悟のメニューを考えているかと言うと、紗夜の余裕の現れであった。
紗夜がこの弁当屋を大切にしているのは、死んだ夫との思い出と言うのは勿論あるが、そんな思い出の店の弁当を楽しみに、美味しそうに食べてくれるお客さんの笑顔が大好きだからだ。
冒険者を続けるにあたって、師匠の黎人からアドバイスがあった。
「冒険者で稼ぐ様になったら、店の売り上げを気にしない、趣味の店をやってみるといい」
紗夜にとって、その言葉は衝撃だった。
ダブルワークをしてきて、冒険者の稼ぎは店の経営の足しにする物と言うイメージがついていたからである。
冒険者を続けて、黎人の指導を受けていればこれからも成長していくだろう事は想像できる。
そうすれば、当然冒険者としての稼ぎは上がる事になる。
冒険者の稼ぎだけで店の経営を賄う事ができれば、今まで支えてくれた常連のお客さんに還元する事もできるのだ。
付け合わせがもう一品あれば、なんて考えながら原価や採算を取る為に頭を捻って、やむなく品数を減らしたメニューもある。
自分がこの弁当屋を続ける理由のお客さんの笑顔を見る為に、今までより余裕を持ったサービスができるのだ。
勿論、OL用のダイエットヘルシーメニューもあれば、成長期の食べ盛りな学生の為のサービスメニューなど、やりたい事は沢山ある。
常連さんの為の今までのメニューを無くす気はないが、特別な弁当を作るのは腕がなる所である。
今考えているのは学生の為の《満腹弁当》な為、どうしても入れたい物が多くなってしまう。
お客さんが新メニューの登場に喜ぶ顔を想像しながら、紗夜の新商品の開発は続いていく。
勿論、まだ冒険者としての稼ぎで弁当屋の経営を賄う程は稼いでいない為、未来の話なのだが、新商品の開発もまた、考えたからすぐにできると言う訳ではない。
詰め込みすぎて、くどくて飽きる組み合わせになっていないかなど、バランスを見ながら試食を作り、試行錯誤の上作り上げるのだ。
まだどんなメニューを入れようかの思考段階なので、完成はまだまだなのだが、将来の為、そして趣味の一環としてメニューを考えるのはとても楽しい。
ふと時計を見ると、予想以上に時間が経っていた。
「さて、そろそろ用意しようかな」
今日は風美夏が友達とダンジョンに行っている。
帰ってきたらお腹が減っているだろうから友達の分も合わせて用意しておこうと思っている。
先程考えた新作の試食もついでにしてもらおう。などと考えながら、紗夜は厨房へ向かうのであった。
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