第208話 風美夏の質問
Gクラスダンジョンの中層辺りで、星空の隙をフォローしながら連携を意識して立ち回り、最後に星空が疲れて来た事を感じとった風美夏は、最後の魔物に風の斬撃を飛ばして戦闘を終了させた。
魔物が居なくなって、星空と風美夏はハイタッチをした。
星空にとっては初めて人と連携を取っての戦闘であるし、初めての中層での戦闘なのだが、風美夏の連携の取り方が上手く、とても戦いやすかった。
「なんで黎人君が育てる子はこうも化け物ばかりなの?」
2人の様子を見ていた引率の黎人と奈緒美の会話の中で、奈緒美はた溜息と共にそう話した。
しかし当の黎人は「そうか?」と気にも止めていないような返事を返した。
「だってそうでしょう?あの時期で風の斬撃を飛ばすってどれだけの才能なのよ」
「才能だけで言えば火蓮以上、紫音よりは下位か?」
「私からしたら2人とも才能の化け物なんだけどね」
皮肉の通じない黎人に奈緒美は苦笑いで答えた。
プラシーボ効果とは少し違うが、風美夏と連携を取って戦っている事で星空の今日の成長は目まぐるしい。
前回、魔石の大量吸収をおこなって上がったステータスに体が馴染み、連携を考える事で動きはどんどん良くなっている。
そこに黎人からのアドバイスを受けて、更に動きが良くなっていく。
魔物が途切れた所で、キリがいいので今回のダンジョン探索は終了となった。
ダンジョン探索が終わって冒険者ギルドへ戻って、個室を借りていつもの様に今日の探索についてのクロージングと次への課題を話した後に、風美夏から黎人に質問があった。
ダンジョン探索とは違った事なのだが、風美夏は黎人に質問するのがいいと思ったのであろう。
その内容は、学校で起こった事件であった。
始まりに起こった剣道部での事件については、黎人も色々と聞いていたし、その後の事も、風美夏や星空から聞いているわけでは無いが、黎人としては把握している。
風美夏は、自分が剣道部に残ってしまった事で起こった事件やそれに関連する事件について、どうすれば良かったのかを悩んでいたのだ。
それに、今回の事件、星空がモンスタートレインに巻き込まれた事件だが、それに関しては、元剣道部員から逮捕者まで出してしまっている。
そうなると不安になるのは、剣道部にも影響があるのでは無いかと言う不安、それに、この出来事は自分が剣道部にマネージャーとして残らなければ起こらなかったのではないかと言う後悔であった。
隣で話を聞いていた星空は、そんな事はないと、口を挟みたそうであるが、自分の意見よりも、尊敬している黎人からの話の方が重要であろうと口をつぐんで真剣な瞳で黎人を見つめた。
2人にとって、この問題は重要な意味を持つだろう。
黎人は、風美夏の質問に対しての回答を、ゆっくりと口にするのであった。
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