第196話 悪巧み
「おい、まだ地上げはできないのか?」
「すみません、あの弁当屋が中々しぶとくてですね、借金があるそうなのでそれを利用してと思ったんですが、男が使えない男で……」
「使えないのはお前だろうが!」
綺麗な事務所で、男が部下に向けて怒鳴っていた。
「お前、ちゃんと魔石は吸収してるか? んなもんその男に任せてないでお前が一緒に片付けちまえば良いんだよ!」
「へい、分かりました。さすが社長です」
男はガハハと笑った。
「たく、使えねえなほんとに。お前はまだ会社の所属じゃないんだから社長って呼ぶな」
「は、はい」
チンピラ風の部下は男にヘコヘコとしている。
この男は何者かと言うと、冒険者マネジメント
地域密着型百貨店の何代目かの社長であったが、不況の波を受けて、譲り受けた百貨店が潰れかけていた所を、新しい事業に目をつけてV字回復した。
目をつけたのはまだ新潟に無かった冒険者マネジメントと言う事業であった。
冒険者人気で、成人した人が冒険者になる為に主要都市に出て行くので、新潟でやれば儲かるだろうと言った単純な考えが当たった訳である。
しかし、冒険者に対しても、マネジメントにしてもノウハウなど無く、聞き齧ったシステムに、百貨店で培った従業員から搾り取るブラック企業システムを組み合わせて、冒険者マネジメント会社を運営している。
ブラックだから去る冒険者も多いが、冒険者は人気であり、新潟の冒険者マネジメント会社はこの会社だけなので、社員もバイトも次々と補充される為に儲けは鰻登りである。
その儲けを足がかりに、百貨店も一等地に移動して、大型商業施設に生まれ変わらせて、参入店舗を増やしてガッポガポを狙っているのだ。
町おこしになる為、賛同する人間も多いのだが、地上げは上手く進んでいない。
目をつけた場所は立地がよく、昔ながらの店が並び、今でも活気もあるので首を縦に振る人は少ない。
その立地に目をつけたのも、百貨店のライバル店舗が並ぶ場所を選んで、潰してしまえば客は分散せずに新しい大型商業施設に来るだろうと言う安直な考えだ。
条件として、商業施設に店舗を入れる提案をしているが上手くいっていない。
今うまくいっている店舗をわざわざ商業施設に入れるメリットが無いのだ。
しかも、店舗を入れる為の家賃がとても高く、経営がわかる人間にとってはデメリットの方が大きかった。
しかし、百貨店をそれで運営して来た男は向こうの気持ちなど分からず、首を縦に振らない元々の店舗の経営者達にイライラしていた所に、この、チンピラな部下が上手い話があると名乗り出てきたのだ。
一応部下ではあるが、百貨店で表に出せない仕事を任せているので表向きは従業員ではない。
なので、ここに呼ぶのも控えているのだが、こうして定期報告をさせる為に呼ぶと、全く進展していないのでイライラするだけである。
幸い、部下の男は下手にでて男の機嫌を取るのが上手く、具体的な解決策など出ていないのに、機嫌を良くした男は、適当な指示で満足して部下の男を退室させるのだった。
部下の男は、退室した後に安保の元へと向かった。
「おい、この前のは上手くいったのか?」
「はい、上手い事金を渡して非通知で注文させたんですが、今月の支払いもしっかりとされてしまいまして……」
「かー、もうお前だけには任せておけねえ、俺に任せてついて来い」
「は、はい」
男と安保は2人揃って次の嫌がらせを行動に移すのであった。
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