85話不満

ある日、大学にて狭間孝久はイライラとしていた。

夕暮れ塾に通い始めて数ヶ月。

個人的に、辛いものの成長していると言う自覚はある。

初めのうちは敗退の後敗走と言うのが当たり前だったのだが、今では戦っている魔物の行動を予測でき、何とか倒せるまでに成長しているからだ。


しかしそれはピンチの時に変わって魔物を倒してくれる服部、白鷺、丹羽のいずれかの講師がいるからであって、夕暮れ塾の講義が無い日はちまちまと入り口で魔物を倒している。

もちろん、今まで5人で倒していた入り口付近の魔物を講義でパーティを組む2人を除いた3人で倒せているのだから成長しているのだと思う。

しかし、そんな狭間がイライラしているのは自分の計画イメージと進行が著しくズレてきているからだった。


当初のイメージでは、1ヶ月もしない内にメキメキと成長して、今までの倍稼げる様になって、稼いだ金で翠に今まで買えなかった様な高級なプレゼントを渡して告白して、はれてお付き合いした後、翠の事を好きであろう楓に見せつける。

などと言った妄想、もとい計画を立てていたのだ。


しかし現実は夕焼け塾の講義で怪我を負った時には酷いものであれば数日の間は個人でダンジョンに潜るのを休んだり、成長は感じられる物のまだ同じ場所での探索な為に稼ぎは上がっていない。

なんなら探索日数が減っている為に稼ぎは少し落ちた。


夕暮れ塾の更新の日にその事について相談したのだが「1ヶ月でこれだけ成長したのでも大きな進歩。勉強の塾だって一月でテストが100点取れる様になればただの天才だっただけだ。

1ヶ月程度で結果が出るならば私達の様な講師はいらないのだから、それに納得が出来ないのならば辞めてもらっても結構。ただ、残った同期が成功したからと言って恨むのは無しだ」と言われてしまい、納得するしか無かった。

結果、将来的には稼げるのだからと、ダンジョンで稼いだ金では足らなかった分は親の仕送りから出した。


翠との仲も進展がない。

それどころか、最近翠と楓が話しているのをよく見かける。

楓をパーティから追い出してから、翠が気を遣って話しかけてやっている様だ。

ゼミで省けになるのが可哀想とでも思っているのだろう。

翠の優しさには感心するが、俺としては面白くない。

まあ、これも俺が翠と付き合ったら話す事も禁止して孤立させてやろう。俺の邪魔をした罰だ。


しかし、このままでは時間がかかってしまう。

和馬と志歩を見ていると早く翠を物にしたいと思う。

なので今日は和馬と志歩に夕暮れ塾以外の探索をもう少し進んだ所で行おうと提案するつもりだ。

実力は確実に上がっているのだし、少し進んだ所で魔物を倒せれば少しは稼ぎも上がるはずだ。


そう考えてダンジョンの待ち合わせ場所まで向かった。


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最近の谷口志歩は憂鬱な日々を過ごしていた。


せっかく思い人であった和馬と付き合えたのだが、その後からは思っていた日常とは全く違っていた。


想像していたのはバイト感覚でダンジョンで稼いでそのお金で服を買ったりメイク用品を買ったりデートをしたりと色々考えていた。


しかし現実は高いお金を払って講義を受け、ダンジョンへ潜って大変な目をして傷ができたりして稼いだお金もまた講義代に消えて、デートに行く時間もないし新しい服も買ってない。

肌も荒れて化粧ノリも悪い。


孝久が言っていた様に簡単に稼げるわけでないのなら将来冒険者になる訳でもないし夕暮れ塾なんて辞めたかったが、孝久と和馬が続けるみたいだったから私も継続した。

貯金もこの数ヶ月で尽きてしまったし、今月で稼げる様にならなければ辞めようと思う。

でも、和馬も一緒に辞めないならデートも行けないし今より一緒にいる時間は減っちゃうな。


今日もこれからダンジョンへと行かないといけない。まだ今日は夕暮れ塾では無いので簡単な魔物で小遣いを稼ぐだけだからいいのだけど。

と、重い足取りで和馬と落ち合いダンジョンへと向かうのだった。











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