73話連絡
2日前、あれほど言ってパーティを抜けたと言うのに大学に行けばゼミがある。
そして、
内容のない話を一方的に話して来る事にうんざりとしながら他の事を考えている。
土方くんはゼミに出てきていない。ゼミのメンバーで結成していたパーティを追い出されたのだから当然だろう。
どちらかと言えば、あんな風にパーティを抜けた私がこうやって出てきている方が図太いのだろうし、何事もなかった様に話しかけて来るこの男の方がおかしいのだろう。
しかし、このまま土方くんは出てこないつもりだろうか?
何となく、この男にお前の話は聞いていないぞとアピールする様に、目に入ったスマホにメッセージを打った。
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この学年になると今までにしっかりと単位さえ取っていれば大学に出席するのも少なくなって来る。
今日はゼミの日なのだが、休んでしまった。
ゼミの雰囲気にどう入っていけばいいのか分からない。
それに、今は自分の思いを忘れるために、春風さんの指導を受ける事に躍起になっていた。
昨日の春風さんのレクチャーを思い出すと、自分が冒険者として活動していた期間は無駄に思えて来る。
まず、何でGクラスダンジョンで指導をするかと言うと、春風さんが免許を持っていない以外にも理由はちゃんとあった。
無理にパーティを組んでFクラスダンジョンで魔石を集めるよりも、1人でGクラスダンジョンの魔石を吸収した方が初めのうちは効率が良いそうだ。
それに、Gクラスダンジョンの初めの魔物の魔石のランクは小さい為、体に負担をかけずに吸収できると言ったメリットもあるそうだ。
実際、軽く魔石を吸収した事がある僕にとっては簡単に倒せてしまう魔物だったのもあって、昨日は1人でいつもより沢山の魔物を倒して、ランクが低く小さい物の、沢山の魔石を収穫した。
今日は、先ずはダンジョン探索をせずにゲート前で春風さんから指導を受けている。
春風さんが言うには、昨日の探索を見て、僕の戦い方に変な癖が着いているから今日はまずその修正から行うそうだ。
「だけど、このいただいたインナースーツってやつめちゃくちゃ動きやすいですね。これでプロテクターよりも防御力が高いって、ダンジョン技術ってすごいですね」
「一般には出ていない所だからな。特に日本だとな」
春風さんは苦笑いで答えてくれた。
武器の扱いをレクチャーしてもらった後は、午後からダンジョンの探索をする事にして昼食を取る為にゲートを潜ってギルドエントランスへ戻る。
一度ロッカーへと戻って、預けていた荷物を確認すると、メッセージアプリに連絡が届いていた。
「椿さん…」
忘れようとしている思い人からのメッセージだった。
[おつかれさまです。ゼミには出てこないんですか?]
残酷なメッセージだった。
僕の気持ちを知らない彼女が気を遣ってくれただけの内容だが、今の僕には辛い内容で、返す気にはなれず、既読をつけた物のそのままアプリを閉じてしまった。
「ん?どうかしたか?」
「いえ、なんでもないです」
僕は沈んだ気持ちを振り払う様に、春風さんとご飯へ出かけた。
その道中、何と椿さんから着信が入った。
びっくりして反射的に応答を押してしまったのでスマホを耳に当てる。
要件は大学には出てこないのか。話があるので今どこに居るのか。と言う事だった。
あまり通話などしないので受話音量が大きく音漏れしていたらしく、春風さんが「心配してくれてるなら来てもらったらどうだ?」と提案してくれた。
僕的には気が進まなかったが、春風さんに気を使ってもらってる訳だし、椿さんに今から行く定食屋の場所を伝えた。
大学から近い為、定食屋に入る前に少し待てば椿さんとは合流できるだろう。
春風さんが居るとは言え、椿さんに会うのは少し憂鬱な気分だった。
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