72話決断

みなさま。ご愛読ありがとうございます。

ついこないだ200万PV感謝の話を書きますと言って約一月、気づけばありがたい事に400万PV。

本当に感謝しております。

やるやる詐欺になってしまっていますが、書きたいと思ってはおりますので、気長に待っていただければと思っております。

それでは、本編をよろしくお願いします。


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京都第四ギルドを出た黎人と楓。

歩きながら、黎人は楓に意思の確認を行っていた。


「さっきは見てられなくて割り込んじゃったけどさ、楓くんはこれからどうしたいんだ?」


「僕ですか、僕は…よく分からないんです。

冒険者をしていたのは翠さんと仲良くなれるかもしれないって不純な動機でしたし、このまま、大学生らしく勉強に専念した方がいいんでしょうか?」


「んー。これは俺の意見として参考にして欲しいんだが、日本では冒険者ってのは社会的な地位が低いと言われているが、世界的に見れば、成功者と言われる人達は冒険者を経験した。又は二足の草鞋を履いている人達ばかりだ。勿論、日本の有名人にも二足の草鞋でやっている人は少なくない。

それはなぜか。魔石を吸収する事はただ単に戦闘能力が上がるだけではなくて知力も上がれば器用さも上がる。

つまり魔石を吸収していない人よりも成功者になりやすくなるんだ。

このデータを元に他の国では学生時代にGランクダンジョンを経験させて、他国より優秀な人材を確保する動きもある。

本来、Gクラスダンジョンに免許が無くても入れるのはそう言った理由からなんだが、日本では違った使われ方をしてしまっているな。

まあ、話はされたけど、大学での勉強するのと同時にダンジョンへ行って魔石を吸収した方が周りの人間よりも優秀になれるのは確かだな」


「…そうなんですか?」


「ああ。それに、やられっぱなしは悔しいじゃないか?これからの人生いろんな挫折を味わうだろう。その時をちょっとでも優位に進めたければ、冒険者の道はありだと思う。

ああ言った手前、楓くんにやる気があるならレクチャーさせてもらうよ。

これでも、弟子を2人育てた実績はあるんだ」


「それじゃあ、お願いします。見返せるかは分からないけど、負けたまま終わるのは嫌なので」


楓の目には流された訳ではない強い意志が感じられた。


「それじゃ、楓くんは今日から俺の弟子だな。とりあえずダンジョン行くか。京都のGクラスダンジョンはどこなんだ?」


「楓でいいです。でも、Gクラスダンジョンですか?」


「基本はそこなんだよ。それに、今俺は冒険者免許持ってないからな」


「ええ〜!」


京都のGクラスダンジョンまでは結構な距離がありその間に色々と話しをして仲は深まった。

京都の伏見支部は、景観を気にして京都らしい和風な作りになっていた。



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その頃、待ち合わせ場所に向かった谷口志歩たにぐちしほはと言うと。


待ち合わせ場所に着いた途端に、揉めている仲間達に戸惑っていた。


「先程も言いましたが何故土方君を追い出したんですか?」



椿翠つばきみどりが狭間孝久に詰め寄っていた。


「アイツは俺達に比べて能力も低いし足手纏いだったから仕方ない事なんだよ」


「別に今までは5人でやって来れたじゃないですか?」


「これから先上を目指すなら足手纏いなんだよ。それに、夕暮れ塾の俺達に割り振られた枠は4人だったしさ」


「そもそも、なんで上を目指さなければいけないんですか?」


「それは、今よりも稼げる様になるし__」


「別に、今より稼ごうとは思ってません!このパーティだって、みんなでやると言うから参加したんです。普通のバイトよりも時間を取られずに稼げると言う話でしたし。

夕暮れ塾でしたっけ?そんなのに参加したら今よりも時間が取られるじゃないですか」


あんなに怒っている翠は初めて見た。

詰め寄られている孝久はタジタジな様子だ。


「み、翠ちゃん、落ち着いて。

ほら、講師の人もさ、黄昏のお茶会のゼロって言う有名な人なんでしょ?」


「黄昏の茶会な」


「うん、そう。和馬、ありがとう。

孝久が興奮しながらに説明してくれたじゃない?」


「だから、私は冒険者として上を目指すつもりは無いんですよ。メリットもないでしょう?」


「それは、強くなれるし、今より稼げる様になるだろ?」


「だから___」


孝久は馬鹿だ。稼ぐ事にメリットを感じていない相手にそんなこと言っても無駄である。


「翠、落ち着いて。ほら、私と和馬は付き合ってるし、翠も孝久と付き合ってるでしょ?

楓だけ仲間外れは可哀想じゃん?」


私のナイス仲裁に孝久はギョッとした顔でこちらを見た。


「私と孝久君が付き合ってる?冗談はよしてください。そんなはずないじゃ無いですか。

どちらかと言うと苦手です。

経験がある分パーティの連携も考えずに1人で突っ込んでいくし、レクチャーだと言ってベタベタと触ろうとして来るし、いい所が見当たりません。

それに、付き合ってるなんてデマを流していたなんて。

私、このパーティを抜けさせてもらいます。身の危険を感じますので」


そう言って、翠は帰って行ってしまった。


「孝久、あんた翠と付き合ったんじゃないの?」


「いや、付き合ったも同然って事だったんだよ。2人きりで買い物とかも行ったしさ、いい雰囲気だったんだぜ?」


「あんた…」


これは、孝久が言ってるのはもしかして翠に付き纏っていただけでは無いのか?

楓には悪い事したかな?でも、夕暮れ塾の定員の為仕方なかったし、私は付き合ったって聞いてたんだし、しかたないよね。


「クソ!でも、夕暮れ塾で稼げる様になって高いもんプレゼントすれば翠ももっと俺に靡くだろ」


「それは違うと思うよ。孝久…」


我が道を行く孝久に私の声は聞こえていない。

まあ、私は無事和馬と付き合えたし、2人の将来のために稼げる様になるならどっちでもいいんだけどねー。


私は隣に立つ和馬の横顔を見てニコリと微笑んだ。






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