71話悩み事
昼を過ぎて席も空き出した定食屋に、黎人と先程助けた青年は居た。
「助けていただいてありがとうございました。それに治療までしていただいて」
青年の顔にあった青たんは綺麗に無くなっている。
この程度の軽い怪我ならば回復の得意でない黎人でも簡単に治すことができた。
「流石に冒険者同士の喧嘩があれ以上ヒートアップするのは見過ごせなかったからね」
「すいません。彼も、昔はああじゃ無かったと思うんですが…」
「乗りかかった船だ。話くらいなら聞こうか?」
「いいんですか?」
「話したくないなら無理に聞こうと思わないがな」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。
あ、僕の名前は楓。
「俺は春風黎人だ。それで?」
「はい。彼と僕は冒険者でパーティを組んでいる仲間だったんですが、弱い奴はいらないと追い出されてしまって。
他にも3人パーティメンバーも居たし、僕も探索の邪魔になるほどでは無いと思っていたんですが…
今日は彼が一方的に言っているだけじゃないか、他のメンバーの意見も聞きたいと思っていつも探索していた
「そのパーティを諦めて他のパーティに入るとかではダメなのか?」
「実は、これを言っては呆れられるかも知れませんが実はパーティメンバーに好きな子がいまして…
あ、そんな顔しないでくださいよ」
顔に出てしまったらしいが、しょうがないだろう。
結局の所色恋沙汰だったのだから。
「ならその好きな女に追い出されたのか知りたいだけなのか?」
「はい。
元々同じ大学の学生だったのですが、ゼミが同じメンバーで小遣い稼ぎにと言って免許を取ったんです。
さっきの男、えっと
彼の言った通り普通のバイトより稼げたんですが、僕以外のメンバーは魔石を全部換金せずに吸収していたみたいでして…」
「それは、吸収してなかったお前が悪いんじゃないのか?」
「冒険者として就職するわけじゃないから吸収しても意味ないって初めに言われたんです。
だから、全部換金した方が稼げるって言われて…
みんな、吸収してたなんて思わないじゃないですか」
ああ。話を聞くところによると軽くはめられた感じなのか?
多分その狭間ってやつが楓が好きな女、もしくは他の誰かの事が好きで、楓が邪魔だったとかなのかな?
こんなに悩む事なく、その女に話を聞けば終わりじゃないか?
「あぁもう。ついて行ってやるからその女に話聞いてこいよ」
痺れを切らした黎人によって、楓は食事の後に京都第四ギルドまで連れていかれる事になる。
京都第四ギルドにつくと、黎人は楓のパーティメンバーがいないかギルドを見渡しながら聞いていた。
するとそこに、声をかけてきた人物がいた。
「あれ、楓じゃん、どうしたのこんな所で?」
「
「臨時メンバーでも捕まえたの?うちらのパーティは居心地悪いもんね」
「え?」
「だって、
「そ、そうなんだ」
「あ、もしかして知らなかった?孝久に上手い事やられてたもんね。翠のこと先輩としてしっかりリードしながら楓だけ嘘の情報流したりしてさ。
私も和馬との間を取り持って貰った手前何も言わなかったけどさ、鈍感だったよ」
「そ、そうなんだ…」
「今日は2人で探索デートじゃない?
あ、この後夕暮れ塾があるからもうすぐ戻って来ると思うけど会ってく?」
「ううん…大丈夫」
「だよね。私達は夕暮れ塾で冒険者の指導してもらえる事にもなったし、置いてけぼりだもんね。その夕暮れ塾の講師ってのがさ___」
「悪いね、楓は俺が指導する事になったんだ。変な塾に誘わないでくれるかな?」
言い負かされ、萎んでいく楓を見て、黎人は黙っている事ができなかった。
昔はこんな事に首を突っ込む性格では無かったはずなのに、弟子を2人育てた影響か、見ていることができなくなっていた。
「なに、お兄さん高ランク冒険者なの?」
「まあ、元冒険者だけど楓を一人前の冒険者にする事はできるよ。ほら、行くぞ楓」
黎人の言葉に楓は「はい」と反射的に答えてついて来る。
2人はそのままギルドを出て行くのだった。
残された志歩はと言うと。
「なにそれ。夕暮れ塾のが絶対にいいじゃん。なんせあの黄昏の茶会のゼロが教えてくれるんだから。
あ、でもこれって言っちゃうと騒ぎになるから秘密なんだっけ。
言わなくてよかったー」
そう呟いて彼氏の和馬との待ち合わせ場所に向かった。
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