第31話 休日
今日は朝から出かける事になっている。
免許申請は明日行く事にして師匠に休日をねだった。
免許を取得すれば冒険者としてFクラス以上のダンジョンへと潜る。
冒険者免許を持っていない師匠の指導も終了してしまう為、寂しさを感じる。
勿論早く冒険者として自立して自分で稼げる様にならないといけない事はわかっている。
今の宿から食事からなんでも師匠に面倒を見てもらっている状況は奇跡なのだ。
いつまでも甘えていてはいけない。
それは分かっているのだが、最後にいいよね。と自分の我儘に師匠を付き合わせる私だった。
「明日はお休みにして出かけませんか?」
そう言った私に師匠はどこか行きたい所はあるのかと聞いてくれた。
だから私は冒険者になる前に普通の高校生が遊びに行くような事がしたいと師匠に言った。
一緒に行きましょうと誘ったら、私1人で行くと思ってたらしくすごく驚いていた。
そして師匠は今日、朝から私に付き合わされている。
今はお昼ごはんに向かっている。
師匠に、昼は何がいいかと聞かれて「麺」とだけ答えた。するとラーメンかパスタどっちがいいか聞かれたので「ラーメン」と答えたら、オススメのラーメン屋に連れて行ってくれるらしい。
そして見えて来たのは行列で、確かに人気のあるラーメン屋なのだろうが流石にこの列を並ぶのはしんどいな。と思っていたら、なんと師匠は列を通り過ぎて店の周りを半周まわった所にあるドアをノックした。
何をしてるんだ。と私が後ろでアタフタしてると、中から店員さんが出て来て師匠を見ると「今日はお二人ですか?」と言って裏口から個室に案内された。
ここは有名なお店で、友達と中を覗いて見たことがあったが、そことは違う綺麗で品のある造りの部屋である。
「春風さん、ご来店ありがとうございます!
こちら、メニューです」
「俺はいつものでいいよ。ほら、火蓮好きなの選びな」
師匠はそう言ってメニューを渡してくれた。
私は《イチオシ‼︎》と書いてあったラーメンを頼んでメニューを店員さんに返した。
「師匠、この部屋って?」
私の質問に、ここは師匠の元クランの下部組織の系列店で、ここのラーメンの味に惚れ込んだ師匠の仲間が店を出す時に出資してクランメンバーがいつでも食べに来れる部屋を作ったらしい。なんでも、都内にはそう言った店が何軒もあるらしく、そう言うお店は普段は使われないVIPルームがこうやってあるらしい。
やはり師匠は規格が違うとおもう。
この店にクランメンバー以外と来たのは初めてみたいだ。元カノさんはデートでラーメンはあり得ない人だったらしい。
私は初めての言葉に少し嬉しくなりながら届いたラーメンを啜った。
もう、絶品だった!
お昼が終われば腹ごなしに歩きながらお洒落な百貨店へと向かった。
今の私はお金がない為ウィンドウショッピングだがかわいい服やアクセサリーを見ているだけで楽しい。
師匠にどれが似合うか聞いてみたりしながらウィンドウショッピングを楽しんだ。
師匠がお手洗いにいって待っている間、ふと目に止まった店舗のショーウィンドウを見る。
高校生のバイトでは手が届かない憧れのブランドだ。
以前友達と来た時にもここから中を見て盛り上がった記憶がある。
そんな事を思い出していたら師匠が戻って来た。
「なに、それ気になるの?」
ショーウィンドウをじっと見ていた為か師匠が質問して来たが「憧れますよね」とだけ言ってはぐらかした。
その日の帰り道、今日の出来事を振り返っていると友達との遊びと言うよりは彼とのデートに近い事に気づいた私は頬が熱くなるのを感じた。
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