第26話 上手くいかない現実
愛知に来て半年
結婚生活は、思っていたものと全く違う事になっていた。
思う様にいかない就職活動。
書類で落とされて面接までいかず、直接面接を受けられる仕事も受けてみるが、色良い返事は貰えていない。
私生活も上手くいっていない。
仕事をしていない分、夫が帰って来たら美味しい物を食べて貰おうと頑張って作ってみる。
しかし、今まで作っていなかっただけに上手く作れず、焦がして捨てる。味見をして捨てる。
人に食べさせる様な物は作れなかった。
その内、買って来たものの方が、安いし、夫も美味しそうに食べている為に最近はもう作るのは諦めてしまった。
家事も、やって来てないものがすぐにできる様になると言う事はなく、やるだけ散らかしてしまう。
せめて、夫がずっと可愛い、綺麗だと褒めてくれていた容姿だけはキレイでいようと面接の帰りに好きなブランドの新作を買ってみたり、メイクに関しても今まで以上に力を入れた。
幸い、夫はお金の心配はしなくていいと初めに言ってくれた。
しかし、日を追うごとに夫婦間の雰囲気はギスギスとしていってると思う。
そして今日、新しく買った服を着て、褒めて貰おうと話していた時、夫は急に怒り出した。
「香織、最近、浪費のし過ぎじゃないか?」
「え?」
「え?じゃないだろ!仕事も決まらないのにブランド物ばかり買って、家事も食事も何もせずに遊び歩いてでもいるんだろ!」
「遊び歩いてなんて、そんな!友達も居ないしできるわけないじゃない!」
「どうだかな!それじゃ俺が居ない間何やってるんだ?仕事もせず、ブランド物や高い化粧品ばかり馬鹿みたいに買って!」
「それは、克樹さんの為に綺麗でいようとしただけで。仕事が決まらないのは、面接でいい返事がもらえなくて、それに、克樹さんもお金の心配いらないからって」
「それにも限度があるだろ!金だって無限に湧き出てくるわけじゃない!香織の無駄遣いの所為で貯金もなくなって来ている!」
「そんな…」
「どうせ俺の事馬鹿にしてるんだろ!不正がバレてこんな所に飛ばされて、元彼が億稼いでたからって当てつけの様に無駄遣いしてるんだろ!バカにしやがっって!」
「どう言うこと?飛ばされたってそんなこと聞いてないわよ?それに、億稼ぐってなに?」
「飛ばされたって香織と共働きしてれば大丈夫なはずだったし、仕事が決まるまでも貯金でなんとかなるはずだったんだ!減給された所で平気なはずだったんだ!これから頑張ってまた上り詰めるはずだったのに、お前の無駄遣いの所為で!」
「減給ってどう言うこと?私に言ってない事、どれだけあるの?」
「それもこれもお前が彼氏を底辺冒険者だなんて言うのが悪いんだ!お前が底辺冒険者なんて言うから貶めてやったのに、こんな事になるなんて!」
「私は彼が冒険者だって言っただけでしょう!貴方が冒険者なんて底辺だからやめておけって、安定してる俺に乗り換えろって言ったんじゃない!」
「うるさい!お前のせいで俺の人生プランはめちゃくちゃだ!」
克樹は怒鳴り上げて家を出て行こうとする。
「待ってよ、話は終わってないでしょ!減給ってなによ、飛ばされたって左遷って事?」
克樹は、香織の言葉に足を止める事はなく、家を出て行ってしまった。
どう言う事?夫は左遷されて愛知に飛ばされて、私はそれに付き合わされてこっちに来たのに?
いや、それより減給で貯金も無くなって来てるって何?
私が仕事してないからってお金の管理は夫がしてたから知らなかった。
これから私、どうしたらいいの?
_____そうだ。私も冒険者でお金を稼げばいいんだ。
雫や瑞稀もやるって言ってたし黎人なんて高校生の時からそれで沢山稼いでたんでしょ?
私にだって、できるわよね?
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