第24話 ターニングポイントcase2
待ち合わせ場所はファミレスだった。
週末ではない為明日も仕事があるし居酒屋などは避けて、話ができる場所を選んだ。
ファミレスに入るともう2人は来ていて、何故か横並びで座っていた。
「お疲れ様」と軽く挨拶をして2人の対面の席に座る。
どちらとも無く何か食べようかと学生時代によく食べたボロネーゼソースのかかったドリアに半熟卵がかかった物を注文してドリンクバーに飲み物を取りに行く。
食べ放題の店でもドリンクを席まで持って来てくれるのに、この辺りはファミレスのめんどくさい所だ。
「それで、話って何かしら?私も、話したい事があるから後で話すね!」
そう言って瑞稀達に話すように促した。
「今日ね、いろいろあってね」
「うん」
「まずはあたしが春風の事をブラックリストに入れたのが問題になってね____」
話の内容は瑞稀が黎人の事をブラックリストに入れたのがバレて、大目玉を食らったって話。
そのせいで給料減額に左遷で生活出来ない位に追い詰められて助けを求めて来たのだ。
私は電話に出られなかったけど、雫が話を聞いてあげて自主退職する事を決めたそうだ。
それで、黎人の話だけど黎人は上位の冒険者だったらしく、私達なんかよりもずっと稼いでいたそうだ。
ならケチケチせずにもっと彼女にお金使えって思うけどそれを今言っても仕方ない事だ。
「それでね、私達冒険者になってやり直そうと思うの」
「え、雫も?何言ってるの?」
「私もね、上司にセクハラされたり無理な仕事押し付けられたりしてもう嫌になって、今日昼からの業務サボったついでに上司に辞表叩きつけて来ちゃったの。
それでね、瑞稀に、私もついて行くから黎人君にあやまる所から再スタートしようって話してたの。
香織も黎人君に
だから、一緒に謝りに行けないかなって____」
「なにそれ?」
「え?」
「それって、私が悪いみたいじゃない?
私を大事にしなかった黎人が悪いんでしょ?
それに、瑞稀も、底辺だって馬鹿にしてた冒険者になるとか本気?雫もそれに付き合うとか性格良すぎ!
謝りに行くのは勝手にしてって感じだけど私を巻き込まないでよ!」
「香織、あのね___」
「それになに、黎人が稼いでたって言っても今は結局無職でしょ?私の選択間違ってないじゃん!
私は今幸せなの!
克樹さんが転勤になるらしくてそれを機に一緒に暮らそうって言ってくれて、両親の挨拶もする予定で!
今日はその話をして、2人と楽しくおめでとうって言ってもらいたかったのに、何なのこれ!」
「香織、___」
「もう知らない!2人で冒険者でも何でもなって落ちぶれてけばいいじゃない!
これ、お金!」
私はお金を机に叩きつける様に置くとそのまま店を出た。2人が何か言っているがもう知らない!
せっかくいい気分だったのに台無しだ。
早足で帰宅すると嫌な事を忘れる様に克樹さんに電話をかける。
やっぱり克樹さんは優しい。
どんな物件を選びたいか、愛知に行ったら何処にデートに行こうか。そんな話をしてれば直ぐに時間は過ぎていった。
ささくれた気持ちも少し落ち着いたので、明日の為にお風呂に入って寝る事にする。
早く週末の克樹さんと会う日が来ればいいのに。
そんな事を考えながら私は眠りに落ちていった。
翌日、出社すると、店長が慌てた様子で声をかけて来た。
「香織ちゃん、オーナーが来られてて、あなたを呼ぶ様にって。昨日の夜に異動の話は連絡したんだけど、来られるなんて、香織ちゃん、事務室にみえるから急いで言ってちょうだい!」
「は、はい!」
まさか、オーナーに会えるなんて!
入社の面接の時も来てなかったのに。しかも、私を呼び出しって、何の話だろ?結婚の祝福とか?まさかね。
事務室に入ると、ソファにオーナーが座っていた。
透き通る金色の髪を上品に結いあげ、
肌の透明感とか、髪の艶とかスタイルの良さのか、私と同い年くらいに見えるし私より全然綺麗なのに40代とか生命の神秘だ。
雑誌の写真で見た事があるだけのオーナー、マリア・エヴァンスを前に、緊張しながら挨拶をした。
「オーナーお待たせ致しました。
オーナーは持っていたティーカップをテーブルのソーサーの上に置くとこちらを見て話し出した。
「そう、貴方が。異動願いを出してくれたみたいね。申し訳ないけど許可できないわ。
それどころか、今日付で退社してもらえるかしら。私、これ以上この店で貴方に働いて欲しくないの」
その言葉に私の頭は真っ白になった。
先ほどまでの興奮などかき消され背中に冷や汗が伝う。
「え、それは、どう言った___」
「どう言ったも、貴方は私の家族くらい大切な人を裏切ったんだもの、仕方ないわよね?
そもそも、貴方を雇ったのもあの子のコネの様な物よ。あの子に頼まれたわけではないから私が勝手に贔屓しただけだけどね。
それと、関わってほしくないから関わりのある会社では働かないでもらえる?」
「ちょっと待ってください、私は___」
「何を言っても事実は変わらないわ。
こうやって出向いたのは直接言いたかったからよ。
もう気が済んだから帰っていいわよ。スタッフには私が伝えておくから」
「そんな、私は…」
「帰りなさいと言っているのよ?」
オーナーの言葉と共に私は呼吸が苦しくなり、震える足で事務室を出た。
帰り道、オーナーに感じた恐怖は微かに残り、震えを止める様に握った手に力を込める。
元々退職も考えていたとは言え、あんな風に解雇されるとは思っていなかった。
私が何したって言うのよ…
「はぁ」
溜め息が漏れる。
また、面接からか。就職活動はとんとん拍子に決まったから苦労した記憶はないが、同級生で最後まで決まらなかった人は何社も落ちて大変そうだったな。
でも、克樹さんとの幸せのためだもんね、頑張ろう!
そう私は気を奮い立たせた。
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