第23話 呼び出しcase2
ずっと、自宅謹慎をしていた俺は、ついに職場である東京第三ギルドへと呼び出された。
家に閉じこもっていた為に伸びた髭を綺麗に剃り上げ、数日ぶりのスーツを着て第三ギルドへと向かう。
まずは部長へと挨拶してからギルドマスター室へ向かうが、挨拶をした部長は素っ気なく、完全に距離を置かれた様だ。
ギルドマスター室へと入ると以前の様に3人のギルドマスターやサブマスターが待っていると言う事はなく、第三ギルドのギルドマスターだけが椅子に座っていた。
俺は背筋を伸ばして直立不動で話を待つ。
「それじゃ相澤君、君の処分についてだけどね。
君のしでかした事は穏便に済ませてもらえる事になった。不祥事として発表せず、穏便に引退していただく方向でな。ゼロが元々引退したがっていた事がこちらの有利に働いたよ。
君への処分も最小限に留めてくれとの要望があった。君の婚約者、ゼロの元彼女らしいな。彼女に不幸になって欲しくないそうだ」
その言葉に、俺はホッと気が緩む。
「しかし、ギルドとしてはなんの罰も与えない訳にはいかない。
よって、3年間の給料を5割カット。それから愛知第四ギルドへの転勤を命ずる。以上だ。転勤時期に関しては来月の
有給の10日以上はもちろん給料無しの休みになるぞ。以上。退出してよし!」
ギルドマスター室を退室した俺は心の中でガッツポーズした。
ヨシ、ヨシ、ヨシ!
思っていたよりもずっと処分が軽い!
3年間今の給料を半分にされたって給料は20数万。香織と共働きなら余裕もある!
同棲し始めれば家賃や生活費も今より少なくなるだろうし、結婚や新婚旅行の為に貯めて来た貯金もある!香織と出会う前から貯めてたから結構溜まってるし、十分だろう。
しかも事実を隠蔽って事は俺のキャリアに傷が付かないはず!
3年間我慢して頑張れば、その後返り咲く事も不可能じゃない!
あの部長も無視しやがって、見てろよ!お前より上になって顎で使ってやるからな!
ふぅ。
しかし、転勤が愛知で良かった。第四がどの地域かわからないが、名古屋付近なら都会だし愛知県内なら名古屋に住んで通勤してもいいだろう。
後は香織について来てもらうのにどうやって説得するかだな。
新婚で単身赴任はダメだろ。
しかし、そうなると香織の気持ちが揺れない様に徹底しないとな。まさか、アイツがゼロだったとは。何かの間違いだと思いたいが今の状況から察するに本当なのだろう。
大々的に引退の発表もあった。
と言う事はアイツは今無職か?なら俺の方がだいぶ有利じゃないか!
天は俺に味方しているなあ!
こうして相澤克樹は帰路についた。
因みに、愛知第四ギルドは南知多にある。
名古屋から電車で1時間半。通うには少々遠い。
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午後8時。
仕事が終わるとスマホの着信に気づいた。
一件は友達の清水瑞稀。
もう一件は婚約者の相澤克樹。
瑞稀からの電話は怖いくらい着信履歴があるが、お昼前の着信だし、少し遅いくらい大丈夫よね。
先に克樹さんに電話をかける事にする。
「もしもし、克樹さん、お疲れ様。今仕事終わった所。ええ。ありがとう_____」
電話の相手は先日婚約したフィアンセの相澤克樹さん。
彼はまずお疲れ様と私を労ってくれた。
自然と笑みが溢れる。
話の内容としては転勤が決まってしまったと言う話だった。
愛知県らしい。
一緒について来てほしいとの話だった。
今月中に両親に挨拶して同棲も始めたいって。
私は今幸せだ。素敵な人に出会えて幸せな生活が待っている!
次の休みの日に2人で愛知で住む新居を探そうと約束して電話を切った。
「ふふっ。次は、瑞稀から電話があったのよね。んー、先に店長に退職の話しておかないとね」
多分店長はまだ店舗に居るだろう。
私は大手百貨店の中にある大人気ブランドのアパレル店舗に勤めている。
ブライダル部門では憧れの婚約、結婚指輪1位に輝く人気ブランドで私も克樹さんに貰いたいが、芸能人やハリウッドスターなんかが買う様な高級ブランド。流石に難しいだろうな。
15年ほどでここ迄の人気ブランドに育て上げたオーナーは憧れの存在だ。
大好きなブランドで、頑張って入ったお店だけど、退職しかないわよね。名古屋の店舗に移動とかできないかしら?
無理よねえ。
やはり、店長はまだ店舗に居た。
「店長、おつかれさまです」
「香織ちゃん、どうしたの?もう帰ったと思ってたわ」
「はい。もう帰ろうと思ってたんですけど彼、えっと婚約者から連絡がありまして、彼が愛知に転勤になったみたいでついて来てくれないかと言われまして…その、」
「良かったじゃない!でも男の転勤に付き合わされるのも大変よね。私達女って。私なら旦那だけで単身赴任へ行かしちゃうけど新婚さんじゃそうは行かないわよね。
分かったわ!香織ちゃんはまだ
「え、それができたらお願いしたいです!」
「分かったわ、聞いてみるわね」
「よろしくお願いします!」
「それじゃ、おめでとう。お疲れ様」
「ありがとうございます!お疲れ様です!」
名古屋の店舗に移動できたら仕事の心配も無いわね!
私はルンルンで百貨店のビルを出た後に瑞稀に電話を掛けた。
瑞稀は会って話がしたいらしく、これから会う事になった。
愛知に引っ越す話とかもしたいし、ちょうどいいわね!
香織は鼻歌交じりで待ち合わせの店まで向かうのだった。
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