第19話 発表
葛飾区ギルドで黎人の冒険者免許取り消しについて話し合いがあった数日後、世界ギルド日本支部はSSS冒険者ゼロの引退を世界へ向けて発表した。
各国によって反応は様々だが、概ね一致しているのがゼロの引退を嘆く声が多いという事だろう。
SSS冒険者は世界に12人しか居らず、その12人で世界のエネルギーの5割を供給していた計算である。それ以外の冒険者で残りの5割。それだけSSS冒険者の力は偉大とされている。
しかし世界のエネルギー供給量は魔石エネルギーの登場以降増加の一途を辿っており、原子力や火力、太陽光などの発電方法に頼っていた時代に比べて100倍の貯蓄量はあると言われている。
勿論、技術の進歩により消費エネルギーも上がってはいるがそれでもとても使い切れる様な貯蓄量ではない。
以前と違うのは各国が独自で発電、消費するのでは無く、世界ギルド本部が一括管理し、魔石取得量の多い国を優遇して再分配するという方法をとる。
なので日本としてはゼロの引退は大打撃だが世界的には「また惜しい冒険者が引退してしまった」程度の認識である。
それ以外にも抜けた穴をいち早く埋めればその国の取り分が大きくなる為、後進の育成に力を入れている国も多い。
過去に育成を急ぐあまり若手冒険者の死亡率が問題になった国もある。
なので世界的にはこの発表はすんなりと受け入れられた。
勿論、他国にも不満に思った冒険者もいる。
そのうち何人かは、事実確認の為の行動を起こしたとかなんとか。
朝のニュースで流れるそんなニュースを見ながら黎人は他人事のように味噌汁を啜った。
「すごいニュースになってるな」
「ほんと他人事みたいに言ってるけど師匠の事ですからね?」
あの話し合いの後、火蓮には事情を話してある。
初めこそ驚いていたものの、よくよく考えれば火蓮と出会ってからの生活は何も変わらないのである。
火蓮としては師匠はやっぱりぶっ壊れに凄い人だったと行った具合に折り合いを付けたのである。
「この味噌汁美味いな」
「それは材料がいいですからね。後はネットのレシピですよ」
最近は外食が減った。
基本朝昼晩と外食か宅配サービスだったのだが、ニートになって収入ゼロになったと勘違いした火蓮が自分で作るといい出したのだ。
家賃収入など不労所得で月4億位は入ってくるので大丈夫なのだが、火蓮が楽しそうに作っているので任せている。
勿論、収入的に問題ない事を伝え、材料代などは黎人が払っているし、いい材料を仕入れている所で生活レベルは全く落ちていない。
「ねえ、本当に今日行かなきゃダメ?」
「ああ。これからの為に紹介するって言っただろ?」
「あーめちゃくちゃ緊張する!」
火蓮が何をぐちぐち言ってるかと言うと、今日は世界ギルド日本支部で元クランメンバーに会う事になっている。
黎人は火蓮が冒険者免許を取った後に挨拶に行けばいいかと思っていたのだが、存外みんな心配してくれていたらしく神崎から伝言ですぐ会う様にと催促があった。
日本支部の会議室を押さえて日にち指定してくるくらい切羽詰まった様子だったから《黄昏の茶会》のメンバーからよほどせっつかれたのだろう。
朝食を終えると支度を済ませると2人は日本支部へと向かった
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