第17話 鉄砂の嵐
どこかのクランルーム。
クランと言っても常時全員でダンジョンに潜るわけでは無いので、暇なメンバーがクランルームに集まり、その中から4〜5人のパーティでダンジョンを探索しているところが多い。
上位のクランになれば、一軍二軍などの固定パーティや、出勤管理などのシステマチックな部分が出てくることも多いが、半分以上のクランはクランルームを利用する為に気の合うメンツが徒党を組んでいる様なところがある。
その様な現実から世間一般の目は、冒険者の事を一昔前の半グレ集団の様な目で見ており、半グレ集団を管理している行政と言う意識がある。
勿論、高ランクの冒険者やクランの活躍を意図的に一般人に見せない様にしていると言う側面もあってのことだが。
このクラン《鉄砂の嵐》もそんなクランの一つである。
大学生時代にリーダーである野村健政が仲間を誘って冒険者を始めた事でできたクランなので、大学のサークルと言った感じである。
他のクランと決定的に違うのはリーダーである健政が絶対の信頼を得ており、クランをうまくコントロールしている点だろう。
それもそのはずこのクランは元々、健政が親の後を継いで政治家になった時に後ろ暗い事を任せる為に作ったと言う背景もあるなので健政の言う事を聞く部下の様な集まりでもある。
そもそも健政が冒険者になったのは政治家になった時のためであった。
一般的に隠されてはいるが、冒険者とは、上に行けば行くほど人智を超えた力を持つ。
たとえEランクという駆け出しの冒険者であってもそこらの道場の師範代や、プロの格闘家を一撃で倒してしまう力量があるのだ。
その力を、恐怖、差別の対象として見せない様に冒険者のダンジョン外の行動には厳しいルールが決められている。
ルールと言ったのは、法律や憲法と言った国独自のものでは無く、その上に世界共通の冒険者法とでも言えばいい様なルールがある為だ。
つまり何が言いたいかというと、健政は、過去に起こった大統領然り、総理大臣など国の代表や政治家に付きまとう暗殺や脅しといったリスクも自分が冒険者になってしまえば怖くないと言った理由からである。
実際、今の健政なら10メートルの距離から放たれるショットガンの弾丸を目で見て掴む事も可能である。勿論、冒険者による
アメリカやヨーロッパなどの政治家に冒険者のSPがつく事はあるし、元冒険者の政治家もいる。
しかしここ日本では政治家になるのは政治家の家系が多かったり、その政治家が冒険者の事をあまり知らなかったりで冒険者のダンジョン以外の有用性に気づいて居ない。
まあ、世界と関わる国会議員の一部なんかはわかっているのかもしれないが、平和な国日本と言われるだけあってその辺の危機管理が甘い。
なのでゆくゆくは自分の力と
まあそれも
実際冒険者になってここまで来てみると政治家と言う仕事が小さく思えてくる。
冒険者として大成した方が社会的地位も大きくなる事も分かった。
なら
そんな事を考えていると、仲間の1人がクランルームに入室して来た。
「健政!親父さん所から裏クエストの依頼来てるけどどうする?」
健政は視線だけそちらに向けて続きをうながした。
裏クエスト。父がそれを依頼してくるのは初めてだった
「なんでも健二が被害届まで出されたらしいな。その相手に被害届を下げさせろだってさ!
相手は葛飾区ダンジョンに通ってるやつらしいから楽勝じゃね?ボコって脅せばいいだけっしょ!それで100万!」
健二がやらかしやがったのか。
あいつは俺の真似ばっかする割になんで俺がそうしてるのか理解してない。
しかも親父に可愛がられて育ったが故に気に入らないと直ぐに癇癪を起こす。
親からしたらバカな子ほどかわいいのかもしれないがその尻拭いを俺にさせるのか。
しかも相手の詳細もわからないじゃ無いか。
まあGランクの奴らは冒険者でも無いだろうから大丈夫だろうが。
「Gランクなら人数要らねえだろ。100万欲しいやつが受けりゃいいんじゃねえか?」
「健政はいいのか?」
「まあそんだけの仕事で100万は魅力的だが裏クエストはリスクが多すぎる。発覚すりゃギルドに目つけられるしな。
やるのは勝手だがクランに迷惑かけんなよ?
個人として受けな」
「お前がそこまで言うって事は、んーやめとくか?」
「え、健政さんやんないんすか?それじゃ俺やりてえっす!」
「あ、俺も!」
「勝手にしな。個人やパーティで受ける分には俺が言う事はねえよ」
健政の言葉に依頼に群がるメンバーが多数。
「よかったのか?100万だぞ?」
「ああ。さっきも言ったがな。100万はでかいが長い目で見りゃ端金だ。俺はその時間があるならランクを上げる為にダンジョンだな」
「お前本気なのか?政治家じゃなくて冒険者で行くってのは」
「今年が勝負だな。大学卒業までにBに上がれりゃ政治家より冒険者のがいい。無理なら政治家!どっちにしろ力を付けて損はねえよ」
「そうか。まあ俺はお前に付いていくだけだがな」
健政の言葉を聞いた男は裏クエスト争奪戦には参加せずに空いてる椅子に腰を掛けた。
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