第15話 ある日のギルド3

 日時は少し遡る


 東京第一ギルド________


 世界ギルド日本支部サブマスター神崎は、朝から東京第一ギルドに来ていた。


「神崎サブマスター。ようこそいらっしゃいました。それで、今日はどう言ったご用件で?」


 ソファの対面に座り、対応してくれているのはこのギルドのギルドマスター。

 妙に腰が低そうなのは、世間の見方が世界ギルドの下が国家ギルドだからだろう。

 別組織な為そこまで下に出る事はないとは思うが。


「まだ極秘事項な為内密にお願いしますが昨日、冒険者名ゼロの登録消去を確認しました」


「な、なんですと…」


 驚くのも無理はない。ゼロは日本の魔石採取ランキングダントツで一位。つまりは世界のエネルギーのうち何割かは彼の採取した魔石で賄われてる計算である。

 そして、彼は世界にも認知されるクラン《黄昏の茶会》のリーダーでもあった。

 まだ若い彼の引退が知れれば世界に激震が走る。

 だから引退を思い止まる様に説得をしていたのだし。


「コチラに連絡も無く急に登録消去だったもので機械の不具合も疑い捜査中だったのですが原因を掴めず。

 他の者から他ギルドでの登録消去を指摘された為ご協力をお願いしました。

 もし他で登録消去していた場合、そこまでさせてしまった私達の行動を改めると共に、その時の状況や対応も確認したいと思っております。

 高ランクの冒険者の引退は世界に影響を与える問題の為、ご理解いただきたく…」


「協力は勿論です。国家ギルドとしましても高ランク冒険者の引退の引き留めは行っております。状況から察するにゼロの引退にはその引き留めが行われていない様子。

 我がギルドとしても問題視しなければ行けません!早速、この部屋の端末から調べましょう」


 各ギルドに共通した事だがギルドマスター室の端末が1番権限が上である。

 その為、この部屋の端末で調べるのが1番効率がいいのだ。


 東京第一ギルドマスター高坂剛士こうさかたけしが端末の席に座りギルドマスターのIDカードと生体認証を使って起動する。

 その後ろに神崎が立ちモニターみる。


 浮かび上がった仮想キーボードを高坂が操作するとすぐに条件の合う端末がヒットした。


「これは、第三ですね。神崎サブマスター、東京第三ギルドでゼロの登録消去が行われた模様です。

 私はこれから東京第三へ向かい原因を調べようかと思うのですが神崎サブマスターはどうしますか?」


「神崎でかまいません。勿論私も向かいます!」


 高坂が車を手配し、東京第三ギルドへと向かった。



 _______________


 東京第三ギルド____


 受付へとやって来た神崎、高坂の2人はアポを取ってないが至急の要件である事を伝え、早急に東京第三ギルドのギルドマスター室へと案内された。


 その事に関して、受付フロアでは話題に上がっていた。

 受付の担当は昼で少ないとは言え、冒険者の担当をしている。

 話題になっているのは裏のデスクスペースや休憩室でである。


 ここでも勿論、話題に上がっていた。


「部長、さっき来た二人、世界ギルドのサブマスターと第一のギルドマスターらしいですよ!」


「らしいな。問題事を持ち込んだんじゃねえだろうな。残業とか勘弁してくれよ?」


「ですね。そっちの問題がとはそっちでやってくれって思います」


「残業は相澤に任せちまおうかな?」


「やめてくださいよ部長!」


「ガッハッハ。もうすぐ嫁と一緒に住むんだろ?そしたら残業減らしてやるから今のうちに頑張っとけって」


「まあ、そう言う事なら…」


 昼の平穏な東京第三ギルド。嵐の前の静けさの様な、穏やかな午後が過ぎていくのだった。

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