第14話 引き渡し
DQN集団を持って、受付までやって来た。
囲まれたのがダンジョンに入ってすぐだった為、魔物にも出くわさなかったし、時間帯も昼前だった為に人に騒がれる事なく受付まで辿り着いた。
出来れば昨日の事情を知ってる猿渡さんが良かったが、見当たらないのでとりあえず空いている受付へとやって来た。
受付の女性は初めこそ驚いていたが、事情を説明すると親身になって対応してくれた。
事実確認は入り口付近の為監視カメラが付いていたらしくスムーズだった。魔物の氾濫をいち早く発見する為のカメラらしいが、そんな事も調べずに俺達に手を出そうとした
もしかしたらそこより深く進む実力がない…なんて事はないよな?まさかな。
被害届を出す為に証拠をまとめて警察に連絡しようとしていた時に、男性のギルド職員がやって来た。
「君達!なんて事をしでかしてくれたんだ!」
「田中さん、一体どうしたんですか?」
担当してくれた受付嬢が驚いている。田中と言うギルド職員は明らかに被害者である俺達に向けられていたからだ。
「君達、この方は都議会議員のご子息だぞ!それを気絶させる程痛めつけるなんて!
ぬ、その紙は、まさか被害届を出そうとかしてないだろうな!ふざけるな!議員のご子息だぞ!」
ああ。こういうのが居るからアイツは調子乗ったんだろうな。
「そうは言ってもカメラの映像を見てわかる様に俺らは被害者なんでね」
「お前達、後で酷い目にあうぞ?」
「権力に屈しないことにしてるんで」
「クソ!俺は知らないからな!」
ギルド職員は捨て台詞を言って去っていった。
受付嬢に謝罪されて手続きを進めてくれた。
一昔前なら被害届を出すにもわざわざ警察に来てもらうか警察署まで行かなければいけなかった。
しかし、ダンジョン初期は今ほど法整備が整ってなかったこともあり、犯罪の温床だった。
なので、最終的に逮捕や裁判などになってくれば警察や検察の管轄だが、ダンジョンや冒険者ギルド内で起こった犯罪のみ、警察に引き渡すまでをギルド職員がする事ができる。
冒険者になればダンジョン内での犯罪の履歴なんかは冒険者免許が記憶するのだが、ここGランクギルドは冒険者未満の一般人が入場者な為に記憶媒体がない。
今回の様にゲート前の監視カメラかもしくは見回りの
あとは目撃証言か?
なんにせよこういうダンジョンの方が犯罪は多いのかもしれない。
魔物に対して死ぬということが少ない分、人間に対しても甘いのかもしれない。
話は逸れたが、そう言った理由で今回の場合は被害届さえ記入すれば後はギルドに任せて帰ることが出来る。
意外と早く済んだので黎人と火蓮は再びダンジョンへと潜るのだった。
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調度品が丁寧に置かれ、防音もしっかりと行き届いた執務室。
そこで高級そうな椅子の背もたれに自身の背を預ける男が1人。
質のいいスーツに身を包んで居るが、年齢によるお腹の出っ張りによりボタンははずしている。
ここは、都議会議員野村健太郎の事務所の執務室。つまり、この男こそが野村健太郎である。
ドアがノックされ、返事を返すと秘書が入室する。
「なんだ?」
「先ほど、冒険者ギルドの田中から連絡がありました。健二君がやらかした様ですね」
「はぁ。またか。いつもの様に揉み消しておけ!警察にも手を回すしかないか。これ程やらかすとは、健二を
「そうですね。優秀な健政君に対して健二君は問題児ですもんね。まあ、出来の悪い子ほど可愛いのでしょうが。
しかし今回健二君は返り討ちにあった様で気絶させられ受付まで連れてこられたとか。
目撃者もいるでしょうし被害届も出された様です。揉み消すのにも骨が折れそうです」
「なんとかしろ!いや、それよりも健二が気絶?被害届だと?
…そいつに被害届を下げさせろ?名前は?」
「元冒険者で春風黎人と言うらしいですね」
「元だと?まあいい。必要なら健政にやらせろ!荒事の経験もいるだろう。アイツの今のランクは?」
「健政君は確かCランクですね。最近は仲間内に政治家にならずに冒険者になろうかと話していることもあるとか」
「困ったものだ。健二が優秀ならそれもいいのだがな。Cランクの実力があれば問題なかろう。なんなら金をだして健政のクラン…なんだった?」
「
「そいつらに裏クエストとしてやらしてもかまわん!」
「では、その様に」
裏クエストとはギルドを通さないクエストのことである。
冒険者は一般人からの依頼を請け負うことで金銭を受け取る事もある。
ギルドを通せば違法性がない事を確認されるが、通さないと言う事は言わずもがなである。
秘書は退室して、すぐに話した事項全てを実行する。
出来る秘書は違うのである。
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