第8話 初ダンジョン終了のご褒美

 ダンジョンに来てから5時間は経った頃。

 火蓮は1人で5匹のオオカミ?を相手取っていた。

 黎人に武器の扱いをレクチャーされてからは実戦あるのみ!

 ただし、初めのうちは現れたオオカミを黎人が間引き、1匹を相手取る。そして、倒した後…初めはその1匹さえ倒せなくて黎人に倒してもらったのだが…

 戦闘が終了した後に武器の使い方や身体の動かし方で正した方がいい所をまたレクチャーしてもらう。そしてまた1匹に間引いたオオカミと戦う。

 これを繰り返して黎人の采配により、今は1人で5匹のオオカミを相手取るまでに成長していた。


 筋がいい。黎人は純粋にそう思う。


 そう考えているうちに火蓮は舞う様にオオカミを倒した


「どう?今のは!」


 火蓮はキラキラした笑顔で質問してくる。

 不覚にも可愛いとおもってしまった。

 顔は整って美人なのだ。いや、しかし俺よ、俺はロリコンでは無い!


「うん。いいんじゃないか?強いて言えば2匹目倒した後に3匹目の攻撃を防いだコンビネーション。もうちょっと慎重にいったほうがい。今はGランクのオオカミだから綺麗に捌いて見事だったがランクが上がれば魔物も強くなる。

 ギリギリの戦いは怪我の元だ」


「うん!わかった!」


「それじゃ今日はこのくらいにして帰るか!いい時間だし飯も奢ってやる!師匠だしな」


「わー!ありがとうございます!師匠!」


 そんなたわいもない話をしながらダンジョンを出て、受付へと向かう。


「お疲れ様でした。お帰りですか?」


 対応してくれたのは入場の時とは違う人だったが、トラブルもなく、スムーズに進んだ。


「受付でも、レクチャーしておく事があるからな。ちゃんとみとけよ?

 すいません。彼女と今日は一緒でお願いします」


「はい。それでは、魔石の申告をお願いします」


「オオカミを72体です。

 冒険者免許を取ったらカードが記録してくれるからカードを出すだけで倒した魔物の数が算出されるけど、地方ダンジョンは自己申告制だ。だからってちょろまかすなよ?後々ややこしくなる」


「う、うん。わかった!」


 火蓮がしっかり見ているのを確認して精算を続ける。


「ありがとうございます!それではこちらに魔石をお願いします!」


 俺と花蓮は指定された計りに魔石をのせた。


「確認ありがとうございます!72個確認できました!買取でよろしかったですか?」


「いや、持ち帰りで頼む。税の分も現金で払う」


「かしこまりました。伝票を作成しますので少しお待ちください」


 俺は火蓮に向き直ると説明する


「魔石は税率45%だ。魔石を現金に変えるとその分を引いた金額を貰う。

 今日は魔石のまま全て貰うから税金分お金を支払うんだ。勿論、税金分の魔石を引いた分を貰うこともできるぞ」


「お待たせ致しました。こちら伝票になりまして、本日のお支払いが2100円です」


 俺は支払いを済ませると魔石を受け取って受付を後にした。

 その後を火蓮がついてくる。


 エントランスの端に移動した後に火蓮に今日最後のレクチャーをする。


「そしたら火蓮、この魔石を全て吸収しようか」


「え!全部?」


「冒険者を目指すならまずは怪我をしない様に能力を上げた方がいい。その為には魔石の吸収だ。Gランクだからしれてるが積み重ねが強くなる

 魔石を売ってもしれてるからな。もっと上のランクに行くまでは吸収した方が効率的だ」


「わ、分かった!」


 そして、火蓮は魔石を取り込んだ。

 能力上昇の実感はないだろうRPGゲームで言えば1から2へも上がっていない。現実はそんなにサクサク上がったりしないからな。


「よし!それじゃ着替えて飯だ!焼肉連れてってやるからなー!」


「焼肉!いいの?」


「強くなる為に美味いもん食わないとな!」


「うん!」


 そして更衣室でボディクリーニングして着替えた後、行きつけの焼肉屋に向かった。


 焼肉屋に着いた後、何故か火蓮は借りてきた猫の様におとなしい。


「どおした?食べ放題だぞ?好きなだけ頼んでいいからな?」


「師匠!」


「ダンジョン外で師匠はやめろ。恥ずかしい!」


「黎人さん!ここ食べ放題じゃないじゃん?メニューに値段のってないですけど、絶対高いところじゃん!」


「別にどれだけ頼んでも金払えるんだから食べ放題だろ?あ、生1つといつものユッケにタン5人前ハラミ7人前とカルビ4人前!

 火蓮、ここは予想以上に1人前の量が少ないからな。思ってる2から3倍頼んだいた方がいいぞ?」


「え、ちょっとまって?えっと、烏龍茶と、キムチの盛り合わせ、それからカルビ2とロース1で。あとご飯の小」


「遠慮してないか?まあ追加で頼むなら好きなだけ頼めよ?魔石の吸収に体力使うはずだから」


 結局、食べ始めたらあまりの美味さに火蓮の箸は止まらなかった。

 お腹がいっぱいになってからしまったと思うくらいには食べた。


 その後、ウェイターが持ってきた伝票が入ってるであろう黒いカバーに目を通さず、カードで払ってしまった黎人を見て、火蓮は自分がすごい人を師匠にしてしまったんだと再確認した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る