わたし⑥
だいじょばなかった。
「……あっれぇ?」
今までで一番早く来れたのに?ここまで来るのにすごくすごーくスムーズだったのに?
「……なんでぇ?」
もう全然分かんない。
(もっと早くにってこと?でもじゃあ何で誰も騒いでないの?)
おかしい。……え、おかしいよね?
「えぇ……」
もう本当に分かんない。
(……とりあえず、色々調べとこう。次があった時に知ってたらいい何かがあるといいなぁ……)
まぁ最近はそんなの見たことないけど……
(いつからだっけ?何にも見つからなくなったの……)
彼女の物どころか誰かがいた様子も見つからなくなったのは、
(……絵本みたいに王子様が来てくれたのかなって思ったけど……)
「王子様じゃなくて来たのは魔法使いだったのかなぁ?」
「じゃあお前は何の役なんだ?」
後ろからよく知っている声がした。
だってわたしと知ってる人は少ないから、その中で彼はとてもよく知っていたから、
『敵』として。
(……早い出会いだなぁ…………)
ゆっくりと後ろを向く。
不思議な模様の仮面、お日様色の髪。
『敵』の王様。
(……まぁ、それは……)
「聞いてんのか? 『国王陛下』サマ? 」
わたしも同じ。
(へんなの……)
いつ聞いてもおかしいと思う。
わたしにはご主人様がいるのに。
このお城で一番弱いのに。
なのに、
ソルテア国の王様。
それが、わたしの今の名前。
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