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「おい、どこにおるんじゃ」
夕暮れのなか、ひとりの女が村のあちこちをせわしなく走っていた。
いや、彼女ばかりではない。ほかにも、右往左往と走り回っている男女が見える。別のところから走ってきた者どうしが、ぶつかりそうになることもある。
「どこへいったんだよ、おい」
「みんな、おらんようになってしもうた」
「祟りじゃ、祟りじゃ」
夜になると、もう探す気力さえも尽きてしまったのだろう。あちこちの
いや、ひとりだけ、すっかりと凪いだ真夏のような暑さの夜道を歩いている者がいる。もちろんそれは、樫井の
「ああ、馬鹿じゃった! あいつらは、あのままぜんぶ持ち逃げしたのじゃろう。わしは明日から、なにを食べればいい?
「おや、あんなところに
僧都の持った手提灯の明かりは、整然と列をなして崖の下の道を歩く童たちを斜めに映じて見せた。
「ありゃ妖鬼の類いじゃ。わしをたぶらかしておるのじゃろう。腹立たしいわい」
樫井の僧都は、手提灯を持ち直して経文を唱えながら、再び山道を歩いていった。
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