龍になった童の話
紫鳥コウ
1
あるよく晴れた日のことである――筆者は
洛外もまた同様である。そこに住む者たちもまた、飢えや渇きを
今日もまた、ひび割れた田んぼを見通せる木陰で、ふたりの男が途方もなく座っている。木陰にいようが、とめどなく汗があふれてくる。田んぼ越しに見える遠くの村は、もうひとっこひとりいないかのように静かだった。
ふたりのうちの片方が、枯れた田んぼの合間の道に、ひとりの
「おい、あそこに
ごくたまに吹く風にざわめきたつ
「どこに
が、もう一方の男の眼にはしっかりと、身ぎれいな貴族の子息のようななりの童がうつっている。のみならず――
「ちゃんと見てみろ、太鼓を叩いて歩いているぞ」
「太鼓? 木の葉がこすれあってる音だろうよ。風くらいは吹いてくれるんだから、今日はめでたい日じゃ」
炎熱地獄が空から降ってきたかのような暑さのなかでは、それ以上しつこく話す気もうせてしまったらしい。木の葉の合間から漏れてくるかすかな光さえ鬱陶しいと
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