アクセサリーを作り始めた経緯
カレンがレジン樹脂で作るアクセサリーのことを知ったのは、何年か前、美容室で読んだ女性向けのファッション雑誌の記事でだった。
レジンのアクセサリー作家が個展を開くそうで、紹介されていた透明でキラキラした作品がとても綺麗だった。
それから数年、記事のことはすっかり忘れていたのだが、カレンの勤め先は菓子会社だ。
賞味期限に問題はなくても、店頭には出せない中途半端な余り物の菓子は、創業以来、伝統的に地元の保育園や幼稚園、老人ホームなどに差し入れを行っている。
そのうちの一つが区民会館で、庶務課のお遣いとして菓子を持参したところで、たまたま地元民によるサークル会員の募集掲示板を見た。
「レジン樹脂で作るかんたんアクセサリーの会」
月会費は材料費込みの2千円ポッキリ。
これならカルチャースクールに通うよりずっと安い。
しかも会社最寄りの駅近くの区民会館での活動だ。
平日なら仕事帰りに寄ることもできるし、休日でも定期券があるから来るのに余計な交通費はかからない。
となれば、悩むことは何もない。
もうほとんど考えず、事務局から参加申し込みをして今に至る。
区民会館でのアクセサリー作りの会に参加して三ヶ月。
実際にやってみると、レジン樹脂のアクセサリーは簡単だけど、奥が深い。
透明なままでもいいし、色をつけたり、中に封入する素材を工夫するとどこまででもやれる。
講師や慣れた先輩たちは何と自分で型から自作もしているという。
カレンは空想する。
自分の作ったアクセサリーが即日完売して、多数のリクエストを貰って寝る暇もなくなる。
やがてバイヤーの目に留まり、デパートに出店したりして……。
実際はもう全然だった。
ようやく売れたと思ったら、送料別にしなかったことと、販売手数料を失念していたせいでむしろ赤字。
そこに来て、こんな体たらくなのに副業副業とわめくクソ上司。
最悪だった。
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