第7話 僕の結婚感
僕はまだ一度も結婚したいと思ったことがない。同棲をしたいとも思ったこともない。もうすぐ28歳になるが まだそういう出会いをしていないだけだろうか。
今まで 彼女が居なかったわけでは無い。まわりが羨ましがるような可愛い子と付き合ったこともある。
可愛くて大好きで大切だと思っていた彼女が 僕の部屋に来るまではいい。朝起きたら僕がコーヒーは入れるし お腹がすけば食事に出かければいいと思う。でも彼女がいそいそと僕のために何かを始めようとすると スッと冷めてしまう。どうしてだろう。『一緒に暮らしたい』とか『結婚したら』とか そういった話もだめだ。彼女がそういう話を口にした途端 僕はどうしても色褪せた気持ちになる。
「大好きだったのに……」
と思う。
でも僕はそれを口にしない。理由は単純に彼女を失いたくないから。ケンカもしたくないし 別れればさみしいから。僕がちょっとだけ我慢すればいい。
だけどなんとなく煮え切らない僕は そのうち女の子から愛想をつかされ 結局寂しい思いをすることになる。僕だって
ふられればへこまないはずもない。しかし少し時間が経つと好きな人に興醒めしたり色褪せたりしなくていいし 『一緒にいたい」と言われなくていいことにことに ほっとしている自分に気付いてしまう。
僕は父親の顔を知らない。物心ついた時から母とふたりだった。父は中国人だそうだ。母は教室をいくつか持っていて日本人に中国語を教える仕事をしている。中国人と日本人のハーフの僕は不自由のない環境と母の揺らぎない愛情のもと 大した悪い事もせず大人になった。母は美しく賢く今も昔も僕の自慢だ。これからもずっと元気でいてほしい。そして僕はいつでも誰よりも母の1番近くにいたいと思っていた。彼女と出会うまでは。
出会ってから あっというまに心も体も彼女でいっぱいになり いつでも一緒にいたいし離れたくないと思うようになった。気がついたらそんな気持ちの自分がいた。すごいことだ。
そしてもっと驚いたのは 大切だった母へ対しての思いが何ら変わらなかったことだ。そのことに僕は心底ホッとした。愛する人達への愛は 分割されるものでは無く2倍3倍に上乗せされていくということを知った。
母も彩絵さんもそばにいると僕は心安らかだ。
だけど彩絵さんに触れると心も体も爆発しそうに荒れ狂う。
continue
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます