第21話 6ヶ月後の二人はちょっと倦怠期っつーかまじで危機だった。

 6ヶ月後の二人は。


 友梨の視点。


 ちょっと前に、私が課長と朝帰りしたことで楓ちゃんが怒ってしまった。でもあれは本当に何もなかった。詳細はこうだ。私が職場を出ると、課長が後ろから声をかけてきた。上司だし、ちょっとしつこかったから断り切れなくて、「ご飯だけなら」とついて行ってしまった。


 正直、そこでずっと口説かれてたんだけど、私は恋人がいるからってちゃんと言ったの。だけど、課長は浮気でも良いからってしつこくって。手持ち無沙汰でイライラしていたのもあって、ついお酒が進んでしまって、、ちょっとふらふらしながら帰ろうとしたら、課長にラブホテルへ連れ込まれそうになった。


 私は慌てていたから、課長を突き飛ばしてタクシーに乗ったんだ。それで動揺してつい、一人暮らししていた自分の家の方角を運転手さんに伝えてしまっていた。

 わかってるの。あとで楓ちゃんに言われたとおり、楓ちゃんを呼べば良かったんだ。それと、会社なんだからコンプライアンスを盾にしてもっとキツく断ったとしても立場が悪くなることもなかったと思う。


 でもだって、あの時はそこまで考えられなかったんだもん。。


 途中で気づいて引き換えしてもらおうと思ったけど、気持ち悪くなっちゃって、一度タクシーを降りた。そのあとふらふらしててあまりはっきりとは覚えてなくって、気がついたら携帯の充電がなくって。少し充電して楓ちゃんに連絡して帰ろうと思って漫画喫茶を探して、、そして気がついたら朝まで寝ていた。


 くすん。。。バカだって思うよ?バカだねってたくさん叱られたって良い。ごめんね楓ちゃんって、甘えられたら良かった・・・んだけど、、


 あれから、楓ちゃんは少し距離が出来た。


 「信じてないわけではないけど、もし課長とって想像してしまったのが頭から離れない」とか言っちゃって、エッチすらしてくれなくなった。うん。楓ちゃんはとても繊細な人。わかってても気持ちがついてこないんだっていってた。わかる、わかるけど、、


 私からキスをしても、私から誘っても、楓ちゃんはずっと素っ気なかった。エッチが出来ないことはもちろん悲しいけど、それよりも、楓ちゃんが私に心を開いていないこの現実が何より辛い。


 一体、どうしたら良いんだろう・・・。もう、めちゃくちゃ辛いよ!


 二人で同じ会社、そして一緒に住んでいるから、一人で泣くこともままならない。そうこうしていると、明日の土曜日が二人が付き合って6ヶ月の記念日だと気づいた。今日は金曜日。仕事も終わり、二人はいつもどおり家で食事を済ませた。


 正直、今日誘って断られたら、本気で泣いて家を出てしまいそう。。だから、私からは誘えない。明日、記念日だねって言えない。私は本当に楓ちゃんと付き合えたことが嬉しくって、このままずっと二人でいられたらって思うのに、、。


 どうしよう。。今夜。。私たち、1ヶ月もしてないんだよ、楓ちゃん。。



 0時が過ぎて、記念日になった。時計を見て、友梨は何も言ってくれない楓花に静かに傷ついていた。このまま、楓ちゃんが寝てしまったら、明日、、ちゃんと話し合おう。もし冷却時間が欲しいのなら、離れて暮らすことになるかも知れないけど、、。あ、やばい。泣きそう。。

 

 涙目なのがバレないように、友梨は先にベッドに入った。背を向けて、ひっそりと泣き止みたかったが、かえって涙が溢れてきてしまった。とそこへ、楓花が黙って隣に入ってきた。


楓花「あの、友梨・・・?寝ちゃったかな。」

友梨「・・・なに?寝そうだったけどまだ寝てないよ。。」

楓花「あ、あのね、、明日、、半年の記念日だから、どこかにでかけない?」


 ず、ずるい。。今、そうやって、欲しい言葉をくれるの・・・?


友梨「ふ、楓ちゃん・・・。」

楓花「え、な、なんで、、泣いてる?」

友梨「ごめんっ、嫌な気持ちにして本当にごめんなさい。お願いだから、前みたいに戻りたい・・・ひぃ・・・ぐずっ」


 ついに、友梨は振り返って、楓花にしがみついて泣いてしまった。


楓花「ご、ごめん、そんなに我慢させてたなんて、、本当に、、私の方こそごめん。。」

友梨「楓、ちゃん、、もう嫌・・・。前みたいにちゃんと、好きって思ってくれてるって思えないと、、辛いよぉ。。」


 泣きじゃくる友梨に、自分がいじけていたことを激しく後悔する楓花。


楓花「ごめんっ!本当にごめん!私、本当に友梨が好きで、、だから、どんどん素直になれなくなっちゃって・・・。友梨はかわいいから、誰かに取られることとか、嫉妬とか、本当に、、どんどん深みにはまっちゃってて・・・。」

友梨「だって、だって、、私、こんなに楓ちゃんのことだけ好きなのに、、わかるようにちゃんと伝えてたと思ったのに・・・。」

楓花「うん、、ごめん。ごめんなさいっ!お願い。もう一度ちゃんとやり直させて!これからはちゃんとするから。。」

友梨「もう、もうっ、触ってくれないのも辛い・・・。」

楓花「うん。私だって辛かった。本当にごめん。」

友梨「楓ちゃぁんっ!わぁんっ!!」

楓花「明日、ちゃんとお祝いしよう?ずっと二人でいて、ちゃんと愛してるって伝わるようにするから。本当にごめんなさい。」


 こうして、二人は泣きながら、1ヶ月ぶりに触れあい、深くつながり合った。


 大人ほど、素直になれずにすれ違いやすいことってあるよね。うんうん。

 

 

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