第5話 隠したい隠せてない!

 楓花の視点


 チッチッチッチッチ。舌打ちじゃないよ。今、非常灯だけの薄暗い部屋で私と後輩の友梨が同じベッドで寝ている。時計の音だけがやけに耳に入ってくるが、それ以外の全神経は私の隣にいる温かい人体へとピリッピリ集中している。


 さっき、なんでか知らんけど「手なら繋いでもいい」とか言っちゃって、私の横にぴったり寄り添っている友梨と腰のあたりで片手を繋いでいる。ちょっと動くと腰に当たるからくすぐったくて(ていうかエロい気分で)ピクッとなってしまう。


 っていうか、なによこれ。友梨って私のこと好きなの?両思いってこと?そんなことってあるの?百合漫画読みすぎて転生してる?なら前の記憶もください。あとチートもください。


 すんごい可愛かった、どうしよう、、。「楓花さん?」とか「先輩?」とかあの上目遣いやめてよね、、私はそのへんのおっさんよりそういうのチョロいのよ。耐性なさすぎるの!ああ、もう好きだもんね。いや前から好きだけどさ。スイッチ入っちゃったよね、、てか付き合うとかムリだと思ってたからどうしたらいいのこれ。


 ああ、繋いでる手がじわっとしてる。汗かいてる。え、なんか良い匂いもする。やだ!呼吸の音が聞こえる!もう寝ちゃったのかしら?私絶対今日寝られないけど?自信ありませんけど??!!


 てか、付き合って良いの?ありなの?わかんないーそういうの聞ける友達がいないから漫画と友達なのに。。っていうかどうしよう!スキッ!!




 友梨の視点


 ああ。先輩と同じベッドでくっついて寝てる。。どうしよう、襲っちゃいたいんだけど。。でも、、今日いつも優しいのにツンツンしてたな。ツンデレ?とは違うかな。ちょっと意味がよくわからないんですけど、、でも先輩はいつも「自分で考えるだけ考えてどうしてもわからなかったら聞くように。」といつも言ってるタイプだから、、


 ああ、近いなぁ、、今から誘惑しちゃって大丈夫かな?でも先輩、真面目だから先に体の関係になるとかあり得なさそう、、。でも私、このまま寝るとか体の反応的にムリなんですけど。手を繋いでいるもう片方の手が今にも先輩の胸に伸びてしまいそう。。


 て言うか、先輩はどっちなんだろう??する側?される側?どっちもだといいな、、。でもこのまま襲っても先輩の可愛い声とか聞けなそう。小言言われながらするのはさすがにいやだな。



「せ、先輩・・・?起きてますか?」


 ちょっと小声で話しかけてみた。寝てたらちょっとだけ胸に手を置いちゃおう、、寝相が悪い感じで。



「な、なに?」


「あ、起きてましたか。」(なんだ寝てなかったのか残念。)


「ね、寝られないの?」


「あ、ハイ。ちょっとだけ緊張してまして。」

「あの、今日、迷惑でしたよね?ごめんなさい。」


「そんなことはない、わよ。。」


「なら。良かったです。でもお酒の勢いで告白なんかしちゃって、、フラれても仕方ないよなぁ、なんて。」


「ふ、フらないわよ。」


「え、」


「ちちちがう。あの、そう、そうよ。私は可能性を無視して拒否したり否定するべきではないと思っているの。だから友梨ちゃんの気持ちに応えられるか自分を試してからでないと筋が通らないというか!」


「あはは。真面目ですね、先輩は。」

「嫌われたくないので、嫌になる前にちゃんとフってくださいね!」


「フるわけないじゃない!」(そうね、そうするわ。)

(あ!心の声を言っちゃった!!!)


「え~!じゃあ、調子にのってちょっとだけ抱きしめたりしても良いですか?」


「そ!(それは!)だっ!(ダメよ!)」

(ありがとう神様、奇跡が起きました!)


「ダメですか??」


「どうぞ!!!」


「え、良いんですか?(びっくり)」

「じゃ、じゃあ、失礼、しまーす?」


 友梨はもそっと上半身をやや起こして、仰向けに寝ている楓花を見下ろした。そして、おそるおそる体を楓花の上に重くないように乗せると、左手を楓花の腰の下に。そして右手は楓花の頭の下に置いて抱きしめた。



(たた大変!ちょー気持ちいい!)

(やばい、ちょー気持ちいい♡)



 だから。両片思いだってば。

 これは成就前のプレイに過ぎない。

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