第3話 ダメですよねダメじゃないってば!

 よし!決めたわよ!

 そこそこ気持ちよく飲み直したら、タクシー代をあげて帰ってもらおう!

 そうだ、それが良い!


 気になる後輩である友梨に押し切られて(押し切られていない)、楓花は自宅へと友梨を招いていた。


 最初は朝まで二人きりなんてムリよ!心の中で絶叫こそしたものの、冷静に状況判断。トラブルは解決を目的として道筋を立てるノウハウ。・・・という脳内会議の末、たいしたことないわよ。可愛い後輩が家に来ているだけ。帰りはタクシー代を払ってあげれば済む、と気持ちの好転を遂げた。


 社会人なめんじゃないわよ!で、さてと。


「じゃ、そこ座って?遠慮しないでくつろいで良いわよ?」


 いつか恋人ができたときのために買った二人掛けのソファを譲った。なぜ隣に座らないかというと、恋人向けの二人掛け用なので二人で座ったらものっすごい近くにくっついちゃうの!


「あ、先輩、そんな床に座らないで一緒にこちらで、、」


「良いのよ。私はいつもここなの。ここが落ち着くって前から決めているの。」


 おかしいよなぁ、私の言葉選び。やっぱり普通にはできていない・・・。


「はい。じゃあ、先輩。改めて飲み直しましょう?あ、でもやっぱり私が先輩を見下ろすのは無理なので、私もそっちに座りますね。」


 なぜ私の気持ちを察することができないの、この子はっ!そんなんで大手の契約任せるの考えちゃうなー先輩は。あ、でも察せられたら困るのは私だわ。良し、許す。あ、来た。近い!近いっ!


「先輩。私、こうしていられてとても嬉しいです。あの、私はずっと先輩のことを、憧れていたので・・・。」


(なにそれっ!かわっ!!)

「かわっ!!!」


 あ!声に出ちゃった!っってててててていうか、精神安定ってどうしたらいいの、今あるのはロキソニンと葛根湯しか、、あ、あと飲む栄養ゼリーとかあった気がするっ!(全て違う)


「憧れって、そんな。先輩後輩って言ってもそんなに変わらないんだし、そんな風に持ち上げなくたっていいわよ?でもありがとうね。」


 今のは大人っぽかったでしょ!


「いえ。もちろん仕事での先輩としてって言うのは。もちろん。あります。だけど私は、、先輩のことを・・・、魅力的だな、素敵だなって見ていて。。」


 ムリ。冷静大人っぽいもう無理。いやぁ~、ちょっと待ってよ。これってどういう意味?なんか、それっぽく聞こえるのって私がこの子のこと好きだからとかじゃないの?そういうのもう大人なんだから勘違いしちゃうとまたパワハラとかセクハラとかコンプライアンスとか、


「私、先輩が好きなんです。」


 あーーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 考える暇くれないこの子ーーー!!!!!!


「ちょっとっ?なにを言ってるのよ。かかかかからかうもんじゃないわよ?」


「からかってません。先輩が好きです。本気です。」


 なんてことなの?!全人口80億人のうち、願望がそのままの形で叶う人ってどのくらいいるの?統計ありきよ!?そしてその後の経過もレポートがないとちゃんと調べたことにはならないわ、って、


「先輩?」


「あ。」

「えーと。そんなこと急に言われても、、困るわ、、だって、私たちは同じ会社で、しかも女性同士よ?対面的にも倫理的にも・・・、」


「先輩は、私のことを恋愛対象として全く見られないでしょうか?」


「そ、そんなことはないんだけど、(いやそれ以外で見ていませんけど!?)」


 私は目をそらし、俯いて黙ってしまった。それが拒否に感じられたのだろう、、友梨は強いまなざしをふっと下に落とし、


「そうですよね、、あの、変なこと言ってすみませんでした。忘れていただけると有り難いです。。」


 どうやら、お酒の勢いに頼り切れなくなったらしい。


「あ。」


 フってしまったの?私・・・

 ちょっと待って。ちょっと待って?


「ちょっと。・・・待ちなさいよ。」


「え?」


 怒られるのかと思った友梨は肩をビクッとさせてこちらを不安げに見ている。


「ああああなたまだ、私に好意を伝えただけじゃない。そそそそこから相手が貴方の提案に興味を持つまで頑張るのが私たちの営業の仕事でしょう?そ、そんな簡単に諦めるんじゃないわよ!」


 またビジネスパワー出してしまった、、何様なのよ私は、、


「え、でも、せんぱい、、ご迷惑になりたくなくて、、私は、、」


「迷惑なんて言ってないでしょ!」


「じゃ、じゃあ?もしかして・・・付き合っていただけるんですか?」


「ちょっと待ちなさいよ!」


「え、ええ、、?」


「休憩させて。飲むわよ。いい?」


「あ、は、はい。。」



友梨の心の声


(ん? んん?)



 

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