第8話 いざダンジョンへ!
【交流】初心者が上級者になんでも質問できる場所 その108【質問】
98:マッシュ(シルバー)
色々調べているが、便乗して動画を投稿し始めるヤツが多くて叶わんな
99:サイレントマ(ブロンズ)
偽物って訳じゃないが、今日だけでワーム関連の動画100件近く上がってるからな
100:マッシュ(シルバー)
『勝てるワームの育て方』『ワーム育ててない人、全員馬鹿です』『ワームに液体のりを飲ませると糸に変化が!?』
数万再生されているこの辺りの動画をチェックしたがどれも糞みたいな内容だったな
101:黒ヤギ(ブロンズ)
液体のりに関しては完璧に虐待だしね。
通報しておきました
102:マッチョイ(ゴールド)
件のヒレンチャンネルにコンタクトを取ろうと思ったけどSNSに鍵掛けてて難しいかもしれない
103:神龍寺司(ゴールド)
俺と戦ええええええええええええええ
104:リンクス(ブロンズ)
htt●:×××
この動画見てくれ……これかなり本物ぽくないか?
105:タケ紙(シルバー)
見てきた
元虫取り少年の俺から見てもこのワームはあの動画のワームと同じに見えなくもないが……
106:マッシュ(シルバー)
ってかこの動画なんなんだ?
ひたすらワームの食事シーンが映されているんだが
107:レビンズール(ブロンズ)
動画時間1時間!?
108:サイレントマ(ブロンズ)
耐久動画かな? イカれてやがる……
109:マッチョイ(ゴールド)
よくわからないがこれも便乗動画と見て間違いないだろうね
110:とんぺい(ブロンズ)
ですね
111:神龍寺司(ゴールド)
俺と勝負しろおおおおおおおお!!
***
***
***
土曜日。
サービス出勤もといヒューマニティワークスを回避した一果はダンジョンにやってきていた。
東京郊外にある通称【高尾・森のダンジョン】。
初心者レベルのエリアから未だ未攻略の上級者レベルのエリアまでが取りそろえられており、配信者やランキング上位を目指すテイマーの練習場所として、さらには外国人観光客にまで人気のスポットである。
「おはよう~相変わらず早いねぇ一果は」
「きゅっぴっぴ!」
「おはよう……ってもう昼よ」
時刻は13時。
テフテフを頭に乗せ駅で待っていた一果の元へ二虎がやってきた。
改札から出てきた二虎は一果の姿を見るなり「荷物少っ!? ほぼ手ぶらじゃん!」と驚く。一果の姿は以前のライダースーツ。後は変装用の仮面と水筒の入った小さなハンドバッグのみ。
周囲のダンジョン目当ての人たちが巨大なリュックやキャリーケースを持ち歩いているのと比べると確かに荷物が少ない。
「……? ダンジョンに入るのにあと何か必要だっけ?」
「アンタ……ダンジョン舐めすぎでしょ……」
「あはは。そういう二虎はええと……旅? 大丈夫? ここ高尾山だよ? 一応都内だよ?」
「知ってるわよ! でも私ダンジョン初めてだし! 色々不安だし!」
二虎は配信者として活動を開始して長いが、メインはゲーム実況だったから、ダンジョンは実は初めてなのだ。
ダンジョン初心者用の解説動画を色々見ている内に荷物が膨れ上がった。
「心配し過ぎじゃない? ここのダンジョン死者数0人だよ? 私の実家の方のダンジョンなんて毎年……」
「死者数0はスタッフさんの努力のお陰でしょ! え、ちょっと待って一果……実家の方のダンジョンが何だって……?」
「遊び半分で出かけた同級生が運悪く……」
「あああああああああああああ」
発狂する二虎。
一果は怖がらせすぎたかと反省し、二虎の手を握る。
「大丈夫だよ二虎。何があっても私が守るから」
「い……一果ぁ」
「まぁ戦うのはテフテフだけどね」
「きゅっぴ!」
『僕に任せて!』と言わんばかりに胸を叩くテフテフ。
「不安……」
「きゅぴー!?」
ある程度戦えるのはわかっているが、テフテフのかわいい姿に頼もしさは見いだせなかったようだ。
「ってか非常時の備えはいいとしてさ……肝心の配信機材はどうするのよ?」
ダンジョン配信には様々な機材が必要になる。
もちろんスマホで簡単配信もいいが、よりクオリティの高い配信を行うためにはそれなりの機材が必要になってくる。
「それは安心して。頼もしい助っ人を呼んだから」
「助っ人?」
「遅くなりました。車を置くところが見つからず……」
大きなキャリーバッグを手に現れたのはスーツを着た小柄な女性だった。
キリッとしたクールな目に高級そうな丸型メガネはとても知的で有能そうな印象を与える。
活動的なパンツスタイルと切りそろえられた髪から不思議な清潔さを感じる。
一果と二虎とは同じゼミだった大学時代の後輩である。
「来てくれて助かるよ。今日はよろしくね、泉ちゃん」
「お久しぶりです一果先輩。今日は声を掛けて頂き、誠にありがとうございます。精一杯頑張らせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします」
固い口調だがその声色から、一果に対する尊敬の念と長い付き合いからくる親しみが感じられる。
「ああアンタか。そういえば企業の動画活動をサポートする事業を立ち上げたいとか言ってたわね」
「あ、二虎先輩いたんですね。ちーっす」
「態度! 先輩に対する態度ぉ!」
砕けた口調から二虎に対する興味の無さと長い付き合いからくる適当さが感じられる。
「今日はダンジョン配信のサポートということで、色々と勉強させて頂きます」
泉もいろいろと研究中ということで、今回は無料で一果の配信デビューをサポートしてくれる。ついでに様々な機材も貸し出してくれる。
「きゅぴぴ」
「こちらがウワサのテフテフさんですね。動画、拝見させて頂きました。ワームの咀嚼音ASMRとして完璧な動画でした」
件の一果が投稿した動画のことである。
無編集で一時間、テフテフが野菜を食べているシーンが垂れ流されている動画だ。
「いやあれASMRじゃないでしょ。ああ勿体ない。せっかく追い風吹いてたのに再生回数32回って……」
頭を抱える二虎。
「え、凄いじゃない32回再生。学校の1クラス分の人数が見てくれたって思うと結構凄いことに感じない?」
「そんなことな……いや……そう言われると確かに凄いかも」
「でしょ?」
「で、でもでも! 便乗目的の偽物判定されたのは悔しい!」
本物なのに! と、まるで自分のことのように悔しがっている二虎を見て微笑む一果。
「安心しなよ二虎。今日の配信で私とテフテフこそが本物だって教えてあげるからさ」
「私も全力でサポート致します」
「二人とも……そうね。まだまだこれからよね!」
三人で深く頷く。
「さて、それじゃあダンジョンに向かおうか」
「きゅぴー!」
「「え?」」
一果の一声に二虎と泉が驚いた。
「何言ってるの一果……これからカフェで打ち合わせでしょ?」
「まだお昼過ぎですし。配信はもう少し遅い19時くらいから始めないと、人が集まりませんよ先輩」
「二人こそ何言ってるの? 今日は上級者向けのダンジョンを完全クリアするんだから。今から行かないと間に合わないよ」
「「えええええ!?」」
一果のとんでもない発言に二人は人目も憚らず驚きの声をあげた。
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