第6話 イモムシ、話題になる
次の日。
競技としてのモンスターバトルを管理する会社【神永エンタープライズ】が運営するサイトは異様な盛り上がりを見せていた。
このサイトにいくつも建てられた掲示板はライセンスを持つものなら自由に書き込みができ、初心者テイマーから上級者まで。
情報交換や交流など様々なことができる場所である。
【交流】初心者が上級者になんでも質問できる場所 その107【質問】
14:ミミカキ(ブロンズ)
この掲示板に集う猛者たちに質問です
今朝SNSでこのようなショート動画を見たのですが……
→htt×××……
私のワームはレッドオーガを拘束できるような糸は使えないのですがどうすればこの技を使えるようになりますか?
15:コロミヤ(ブロンズ)
朝から話題になってるヤツだな
結論から言うとワームはこんな技覚えない
16:ミミカキ(ブロンズ)
ということはワームに見えるだけで全く別の新種ということでしょうか?
17:タケ紙(シルバー)
元虫取り少年の俺が通りますよっと
映像から見て取れる情報だけだと完全にワームで間違いない
ただ技に関してはここまで拘束力のある技は使えない
ってかワームは普通の虫と同じちょっとベタベタする糸しか吐けない訳で
18:タロウ(ブロンズ)
でも現にレッドオーガの動きを封じているんですがそれは……
19:タケ紙(シルバー)
だからフェイク映像の可能性も否定できない
動画の出所は?
20:マッシュ(シルバー)
ヒレンチャンネルっていう底辺配信者の生放送を視聴していたヤツが無断で切り抜いてアップロードしたらしいな
元動画は削除されてる
21:サイレントマ(ブロンズ)
配信のアーカイブもさっき非公開になったぜ
22:マッシュ(シルバー)
マジか……情報を欲したヤツが詰めかけたか
23:マッチョイ(ゴールド)
とにかくこのワームに関する情報が欲しいね
なんとかテイマーさんに接触できないだろうか
24:マッシュ(シルバー)
おお……トップランカー配信者のマッチョイさんまで動いてるのか!?
25:ミミカキ(ブロンズ)
はじめましてマッチョイさん
いつも動画楽しみにしてます
26:マッチョイ(ゴールド)
>ミミカキさん
ありがとう!
とにかく仮面のワーム使いに関しては情報が少なすぎる
まずはレッドオーガを使っていたヒレンチャンネルさんに接触してみようかな
27:マッシュ(シルバー)
俺たち有象無象より安心と信頼の100位ランカーが動く方が確実にいいな
28:タロウ(ブロンズ)
ヨロシクお願いします!
29:マッチョイ(ゴールド)
何かわかったらここで情報を共有しよう
情報を共有することでテイマー全体のレベルを高める
僕の活動はそのためのものだからね
30:タケ紙(シルバー)
動画の真偽(フェイクかガチか)
仮面のテイマーについて(年齢や経歴)
ワームの正体について(新種なのか、違うならそんな技をどこで覚えさせるのか)
この3点が気になります
31:マッチョイ(ゴールド)
オッケー
調べてみよう
32:ミミカキ(ブロンズ)
ヨロシクお願いします
33:マッシュ(シルバー)
ヨロシクお願いします
34:狩野慎二(ゴールド)
ヨロシクお願いします
35:ラルフ(ブロンズ)
嘘だろww
36:火灯(ゴールド)
狩野慎二w
ランキング10位の人キターwww
37:狩野慎二(ゴールド)
SNS見たら気になった
雑な情報ならSNSだけど確かな情報を集めるならここかだろうってな
38:
是非直接戦いたい
仮面のテイマーよ
もしここを見ているなら俺に連絡を寄越せ
貴様のワームと俺のドラゴン、どっちが強いか決めようではないか!
39:狩野慎二(ゴールド)
俺より凄い人来ちゃったw
40:ミミカキ(ブロンズ)
神龍寺司……ランキング2位の……本物だ
41:マッシュ(シルバー)
あの神龍寺まで出てくるとか今日はお祭りか!?
42:ラルフ(ブロンズ)
上澄みのゴールドランクの中のさらに上澄みのトップランカーたちがぞろぞろと……
43:狩野慎二(ゴールド)
レッドオーガを手なずければテイマーランクゴールドまではヌルゲーになる
それくらい強力なモンスターをワームで倒したんだ
話題にもなるさ
44:マッチョイ(ゴールド)
凄い人たち出てきて怯んでたがとにかく調査を進めてみるよ
他にも何かわかった人がいたら共有よろしく
***
***
***
SNSでそんな事件が起こっているとは全く思っていない結城一果は普通に出社し、業務をしていた。
時刻は22時。
ようやく自分の仕事を終えた一果が帰り支度をしていると……。
「どこへ行こうと言うのかね結城くん」
「部長……」
運悪く巡回中の部長に見つかってしまった。
ジェルで固めた頭を輝かせながらにっこりと笑いつつ近づいてくる。
「仕事が終わったので帰宅しようかと」
「まだ仕事が終わっていない人がいるじゃないか。手伝ってあげなさい」
「はい……」
「うむ。これこそが絆だねぇ」
この会社では一人でも仕事が終わっていなければ全員でそれを手伝う。
一果も後輩の仕事を請け負おうとデスクに近づく。
「はぁ~今日も終電までサビ残かぁ……はっ!?」
その時、部長の襲来に気付いていなかった社員がぼやいた。その社員はすぐさま部長に詰められる。
「我が社はサービス残業なんて存在しない。いいね?」
「う……うす」
「残業とはサービスでするのではなく、博愛精神でするものだ。いわゆる【ヒューマニティワークス】だよ」
(どっちみち残業代出ないんだから同じだろ)
と心の中で突っ込みつつ、半泣きで作業していた後輩の仕事を一部請け負う。
金曜日には必ず飲み会があったり(土曜も出社の場合が多い)。
運動会やBBQ、年末の社員旅行などのイベント(自腹)があったり。
力仕事は男性社員、お茶くみは女性社員などの性別による格差があったり。
時代に逆行どころか時代を滝登りするような一果の会社だが、こんなんでもそこそこ有名な企業だったりするのでたちが悪い。
ようやく会社を出られたのは23時を回った頃だった。
「はぁ……」
一果はスマホを取り出す。
メッセージアプリを起動し、親友の二虎にメッセージを送る。
『今電話大丈夫ですか?』
すると秒で着信が入る。
『何?』
「早っ!? 早すぎてびっくりしたわ」
『一果の電話にすぐ出られるように24時間スタンバイしてるからね』
「普通に怖いから寝て」
『うそうそ。ゲーム配信してるとどうしても夜型になっちゃうからね~丁度今終わったところ~』
「なら良かった。で、相談なんだけど……」
『相談?』
「うん。この前の配信の件。ちょっと真剣に考えてみようと思って」
『動画チャンネルを作るってこと?』
「そうね」
『やったー! じゃあ今から行くわ』
「ありがとう。お金出すからちゃんとタクシーで来てね」
『サンキューサンキュー! いやーそれにしてもいいタイミングだよ一果。丁度追い風吹いてるし、チャンネルはすぐに軌道に乗るよ思うよ』
「追い風?」
『うん。だって一果とテフテフちゃん、今ネットで滅茶苦茶バズってるから!』
「……は?」
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