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 白石椎名という男は、いつも明るくて笑っていて、そういえばそれ以外の表情。

 例えば今みたいなホッとしたような顔や怒ったような顔なんかを学校では見たことがなかった。


「白石って、意外と表情豊かなんすね」

「え?」

「……教室ではいつもニコニコしてるんで」

「あー、あれね。あれはこう、表情管理ってやつだから」

「ひょう……?かん?」

「表情管理。アイドルとかがさ、ステージ出る時、ニコッてした顔作るだろ。それと同じ」

「内心は笑ってないって事っすか?」

「そういうわけでもないんだけど……。ほら、なんかの弾みで、俺の趣味嗜好がバレる事があるかも知れないだろ。それを考えると、やっぱちょっと怖いからさ。なるべく笑ってそつなく過ごしてる」

「なるほどです」


 そっか。当たり前だけど、俺が知らないところで白石も苦労しているんだ。



「てか何で敬語?」

「……白石はカーストトップなんで」


 俺が頭をペコペコ下げると、白石はちょっと複雑な顔をした。


「俺は今佐藤と話してるんだから、カーストとか、そういうのはナシがいいんだけど」


 真っ直ぐな瞳が俺を捉える。誰かにこんなにしっかり見られたのはいつぶりだろう。それもかなりの美少女……って白石だった。危ない危ない!


「じゃ、じゃあタメ語で」

「おう。てか腹減らない?佐藤バイト終わりだし、なんか食おーよ」

「そ、そ、そうだ、ね!」

「ははっ。噛みすぎ」


 それから俺たちは頼んだポテトをつまみながら、色々な会話をした。









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女装したクラスメイトのチャラ男くんが可愛すぎる。 郡ハル @ro1717

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