次の日、なんだか憂鬱な気持ちで学校へ向かうと、3年3組の教室は駿と美玲ちゃんを囲む会と化していた。どうやら美玲ちゃんは昨日無事に駿に告白できたようだった。


「なれそめを教えてくださあい」

「わたし、ずっと2人はお似合いだと思ってたんだあ」


 ヒューと歓声があがる教卓のあたり、駿と美玲ちゃんはお内裏様とお雛様のように並んでクラスメイトから祝福を受けていた。美玲ちゃんは昨日の俺への態度なんて夢だったんじゃないか?!と思うほどにっこりと笑っていて、その笑顔はやっぱり可愛い以外の何物でもなかった。駿は駿で、まんざらでもなさそうな感じで「まあまあ」なんてヒートアップする女子たちをなだめている。


 俺はそっと自分の席に着いた。いつもなら何の疑問もなくあの中に入っていって、みんなと同じように駿を冷やかしていた。でも今日は違う。


 ―――こんなの


 美玲ちゃんの言葉が頭の中をぐるぐる回っている。こんなの、こんなの。


 しばらく遠巻きに騒ぎを眺めていると、駿と目が合った。あ、やべ。


「おう!隼人!おはよう」


 駿は教卓からさっと降りて俺の席へ駆け寄ってくる。

 その後ろ、まだ教卓のほうに残っている美鈴ちゃんとその仲間たちの目。

 やっぱり昨日と変わらない。いらないものを見るような、冷たい目線だった。


「……」

「おい、隼人ー?」

「あ、おは」「ねえ、駿君、あんまり隼人君にかまわないほうがいいよ。隼人君、ゲームの話ばっかりだし!」


 美玲ちゃんの大きくて甲高い声が教室内に響く。

 周りの女子たちがクスクスと笑って「たしかに」と同意している。

 駿は困ったような顔をして俺を見る。やめてくれ。なんなんだよ。


「……俺に話しかけないで」


 その一言を絞り出すので精一杯だった。

 駿は事態が呑み込めていないらしく「なんだよ急に」とふてくされて俺から離れた。美玲ちゃんがまた駿の隣に引っ付いて、横目で俺を見てふん、と笑った。




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