第7話 扉

「ここもハズレ~っ!」

 ここまで幾つの扉を開けただろう。微妙に曲がっていたらしい長い道の両側には数メートルおきに幾つもの扉があった。ウキウキとその扉を開けた先には……


◯[また壁だね]

◎[まごうかたなき壁だね]

▽[ここまで全部ダミー扉ってのももはやギャグかな]


「結構歩いたと思うんだけど、どこまで続くのかなこの廊下」


∀[ループしてる可能性があるぞ。質の悪いダンジョントラップだ]

◆[目印か何かを付けておいて元の方向に戻ってみたら?]


 そういえば、『迷いの森』とか特にフィールド型の森系統のダンジョンでは方向感覚を狂わせたりループしている場合があるって講義でも習った気がする。

「それなら、壁に目印の傷を……って固くてつかないね。しょうがないからおやつのビスケットを割って置いておくよ」

 ダンジョンに放置されている物はそのうちダンジョンに吸収されると言われている。とはいえ、すぐ吸収されるわけではなく、二十四時間はかかるらしい。また、吸収されるところを観測された例もない謎現象だ。


 時々ビスケットを食べながら来た道を引き返す。

「あんこ入りのビスケットもなかなか美味しいわん」


△〚いや、食べてばかりじゃなくて目印としておけよw〛

◎[おやつとはいえ、幾つビスケット持ってきてたんだ?]

∀[そろそろ引き返して扉も50個目……]


『きゅーっ?』


 ビスケットをもきゅもきゅ食べている角兎と目が合った。

「それはボクのビスケットだと思うんだけどキミはどう思うわん?」


◆[これはループ確定かな]

❤〚あれはジャム入りのビスケット?〛

∀[しかし、この角兎はどこから現れた? ポップするならこれまでに会ってないと流石におかしいが……]


「さぁ、ビスケット返せー!」

 先手必勝とばかりに畳針れいぴあを突き出すが、軽くバックステップで避けた角兎は一目散に逃げ出した。慌てて追うボクの前には二匹目の角兎、どこから現れたのか一心不乱にビスケットを食べていた。


『きゅっきゅっきゅっ!』

『きゅーっ?』


「待て待てだわん!」


『きゅーっきゅっきゅーっ!』


△〚兎増えてて草〛

◎[5匹になったw]

∀[けど、ループ部分終わったみたいだぞ、ビスケットなくなった]


「ん、ビスケット終わり?」

 確かに廊下に撒いてたビスケットがなくなっている。


◯[あ!]

❤〚えー、うさちゃん消えた?〛

▽[いやいや、そんな馬鹿な]


 ちょっとビスケットに気を取られて角兎から目を話した途端、前を走っていた角兎たちが忽然と姿を消していた。


∀[すまん、余計なことを言った]

◯[見てたけど、ちょっと横に逸れた気がする]


 とは言っても壁は壁だ。コンコンと壁を叩くも変わったところは……

「めりこんでる?!」

 ちょっと前に出した足がダンジョンの壁にめり込んでいた。











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