第5話 初級ダンジョン
ダンジョンには2種類あると言われている。
いわゆる迷宮型のダンジョン。これは、洞窟や遺跡、塔等、様々な閉鎖空間を取り、通常、複数の層から構成されている。
そして、もう1つがフィールド型のダンジョンだ。
そんなフィールド型のダンジョンの1つである初級ダンジョンにホクは来ていた。
「こんにちわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん。
今日はフィールド型ダンジョンを潜る? 探索するよ」
入り口でもある洞窟型の通路の中から配信を開始した。
◯[こんわん。フィールド型楽しみ]
△〚暗いね〛
◆[初級ダンジョン?]
「そろそろ通路を抜けるよ――」
洞窟を抜けた先にはダンジョンと思えないほどの広大な空と草原が広がっていた。
❤〚うわー、綺麗〛
◎[フィールドっていうか、別世界?]
◯[これがダンジョンっての信じられないよな]
フィールド型のダンジョンは1層だけであり、入り口の洞窟等を抜けた先には広大な空や自然といった文字通りの別世界が広がっているのだ。
なお、フィールド型のダンジョンでは入り口から離れる程に
「これは気持ちいいわん」
現在地は何もない平原の真っ只中であり、遠くには山や森も見えた。
また、草原のあちこちにはこのダンジョンの第一区画の
∀[
△〚つのうさぎって?〛
◆[まんま、角の生えた兎で、臆病だから襲ってこずに逃げる]
呑気に草を食べている角兎にゆっくりと近づく……
『きゅっ?』
角兎のつぶらな瞳と目が合った。
「あ、こんにちは、わん太です」
『きゅきゅっー!』
甲高い叫び声と共に黒い瞳が赤く染まる。
やっぱり、対話は無理なようだ。
「うわっ」
突進してきた角兎を避ける。
∀[わん太、後ろ!]
「え?」
振り向いた先には同じく突進してくる別な角兎がいた。
慌てて避けるが、その向こうには立ち上がってこちらを見ている角兎達が見えた。
『きゅきゅっー!』
『きゅきゅっー!』
『きゅきゅっー!』
遠吠えのような角兎の鳴き声が響いている。
「もしかして、仲間を呼んでる?」
◆[角兎って群れで狩りをするのか……ためになるなぁ]
△〚わん太くんロックオン状態だね〛
∀[臆病というが、自分たちより弱そうな相手には強気っぽいな]
確かにボクのほうがウサギたちより小さいけど、これはない。
わらわらとウサギたちがボクに向かってきており、さながらスタンピードのようだ。
「と、とりあえず、逃げるわん」
次々と角で特攻してくるウサギたちを躱しながら駆け出した。
どれくらい平原を走っただろうか……
まだ、角兎たちの先頭を走っていた。
「ちょっと、全然数が減らないんだけど!」
突進してきた角兎を躱して置いてきぼりにしているのだが、追いかけてくる群れは減った気がしない。
∀[いや、突撃してきたウサギは脱落していってるぞ]
◎[けど、時々そこらの穴から合流してる]
『きゅきゅっー!』
◇〚むしろ増えてるかな〛
このままではジリ貧だ。どこかで迎撃する必要がある。
できれば一体ずつに絞って戦いたい。
◇〚丘になにか見えるよ〛
▽[村か砦っぽいな、石畳や塀が見える]
◆[
塀があるなら、ウサギたちを迎えうてるかもしれない。
「よし、丘を上って反撃開始だわん」
丘の上は意外と広く、朽ちた石組みの塀や家があちこちにあった。
若干迷路のようになった廃墟を隠れるように走り回る。
「それっ!」
畳針が角兎の首筋を横から貫く。
❤〚わん太くん、強い〛
◆[前より格段に動きがよくなってないか?]
『きゅきゅっー!』
「うわっ!」
急に足元から角兎が現れた。
『きゅっ!』
『きゅっ!』
『きゅっ!』
ボコボコと周りに穴があいて真っ赤な目をしたウサギたちに囲まれてしまう。
逃げ道は背後の壁、ちょっと高いが手に入れたスキルを使えば……
「――『浮遊』」
ふわりと体が浮く。
『きゅきゅっー!』
正面の角兎が飛びかかってきた。
あ、浮いた状態では回避できない……
∀[わん太!]
❤〚わん太くん!〛
お腹に角が突き刺さるのが、何故かゆっくりとして見えた。
スキルの効果が切れ、少し浮いた状態から角兎と共に地面に落ちる。
―― ピシッ
落ちた衝撃で石畳に亀裂が入った音がして、背中の石畳の感触が消える。
急な浮遊感と共に、落ちていくのが分かった。
既に数メートル上のぽっかり空いた穴から高い空が見える……
―― 配信が中断されました……
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