第4話 ガチャ配信

「こんばんわ~ん。ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太だわん。

本日は何が出るかわからないガチャ配信だよ」


❤[わんわん]

◯[ばんわーん]

◇[今流行りのソシャゲですか?]


うん、うん、ソシャゲのガチャと思うだろうけど違うんだ。

「それでは紹介します。ガチャ筐体のガチャ丸くんです」

僕の背より大きいガチャ筐体をカメラに映るように移動させる。


◎[リアルガチャw]

❤[ガチャ丸くん?]

◇[ガチャ筐体だと……]


「ガチャ丸くんは家の前に捨てられていたのを保護しました」


❤[勝手に拾ってきたらだめだよ]

◆〚捨て犬、いや、捨てガチャ筐体〛


「『ひろってください』って書いたダンボールに入って捨てられていたのです」

雨の中、寂しそうに一台で放置されていたのを頑張ってもって帰ってきたのだ。


◯[それならいいのか?]

◎[良いとは言えないかもしれないけど、『ひろってください』なら悪くはないかも]


「それでは、スキルガチャを回していきたいと思いますわん」


◯[えっ!]

◆〚スキルガチャ! 都市伝説かと思ってた〛

◎[スキル?]


スキルガチャって聞いたらビックリするよね。けど、前面のパネルにそう書いてあるのだ。

「100万ポイントで1回引けるみたいです。結構設定が渋いよね」

一旦ポイントとしてチャージされ、それからガチャを引けるようになるみたいだ。

とりあえず、百円玉をガチャ丸くんに近づけると筐体に吸い込まれて100ポイント増えた。


◇[吸い込まれた]

◎[すげぇ、なにそれ、ヒャンタジー?]


円=ポイントの等価換算みたいだ。つまり、1回引くのに百万円かかる。

「全然たりなさそうです。何でも入れられるっぽいので適当に入れてみます」

そう言って自分では飲まない栄養ドリンクを取り出す。


◇[なんか光ってる気がするけどそれ何]

◆〚もしや……〛

∀〚わん太、待て、待て、ステイ!〛


「なんとかっていう草で作った栄養ドリンクらしいけど僕飲まないし」


◆〚エリクサー! まって、いれるのまってぇ〛

❤[ゲームでよくあるやつ?]

∀〚ステイ! ステイ!〛


「そうそう、それそれ、えり草だった」

ぽいっと放り込むとガチャ丸くんがピカッと光った。

「おおー、1500万ポイント貯まった。とりあえず、1回引いてみようか」


◆〚ああ、エリクサーが……〛

∀〚うあー、うあー〛


ガチャのレバーを回す。

ころん、とカプセルが排出され、身体の中に吸い込まれていった。


―― 『浮遊』


スキルを発動するとゆっくりと浮かんだ。

移動は出来ないけど、1メートル程浮き上がることのできるスキルのようだ。


◎[浮いた……]

◇[え、浮かんでる?]

◆〚あー、『浮遊』スキルか〛


リスナーが色々言っているが、それどころではない、これはすごいスキルだ。

「これで高いところのおやつも取れる、これは神スキルわん。

早速コンビニで試してくるわん、それじゃ、今日はここまで、おやすみわーん」


いつも取りにくい甘栗の袋もこのスキルがあれば楽勝に違いない。

もしや、自販機での買い物も一人でできるのでは?

世界が広がる神スキルを取得してウキウキと家を出た。


―― 本日の配信は終了しました……


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