第3話 in Dungeon
薄っすら光る石壁が続いている。
洞窟型の初心者ダンジョンだ。
ひとつ深呼吸をしてから配信開始のボタンを押した。
「こんにちわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太、新米
❤〚こんにちわーん〛
◯[珍しく昼の配信だとおもったら、ダンジョン?]
◇〚おお、ダンジョンっぽい〛
「
∀[『初の』ダンジョン配信w]
◎〚草ー〛
◯[なかったことにされる前回のダンジョン配信w]
「ダンジョンの中は思ったよりひんやりしてるわん。
ところで、スライムくんはどこにいるのかなー?」
左手沿いに進んで行くが、なかなかスライムに会わない。
∀[入り口付近は狩り尽くされてるから]
❤〚あっ〛
◎〚うしろ、うしろー〛
「なになに、うしろ? ん?」
足元にうっすら丸い大きな影がかかる。
「うわー!」
慌てて横に飛び退くとドスンと半透明の丸い塊が落ちてきた。
◎〚スライム? でかっ〛
∀[いや、わん太が小さいから大きく見えるだけだから]
◯[しかし、迫力あるな]
ボクの倍はありそうなスライムがポヨポヨしている。
武器を握り直して記念すべき初戦闘を開始しよう。
◇〚なんの武器?〛
◯[
∀[オーダーメイドは高いぞ、3桁万円するかも]
「いいでしょー、価格はなんと、3本で700円。
畳針って安くてサイズも丁度良かったんだよね」
◎〚裁縫針w〛
∀[いや、安っ! って針かよ]
ぽよぽよスライムの攻撃というか体当たりを避けながらリスナーと会話する。
すきを見て畳針でぺちぺち斬りかかる、いや、殴りかかるがダメージを与えられている様子はない。
「ところで、スライムの弱点ってどこ?」
◯[ないね。むしろ、打撃系に強い]
∀[斬撃や刺突には弱いから針とは相性いいよ]
つまり、針で倒すことは可能と。
「よーし、それじゃぁ頑張って倒すよ」
タイミングを測って回避、すかさず、針を突き刺す。
ぷつん、という何か膜のようなものを破った手応えと共に畳針がスライムに吸い込まれるように突き刺さった。
◆[クリティカル?]
∀[わん太のスキル、細剣術か? 大分補正かかってる気がする]
❤〚わん太くんすごい!〛
針の一撃により、スライムが光の粒になって消えていく。
どうやら、激戦を制したのはボクのようだ。
「初っ端からボス戦とは思わなかったわん」
額の汗をぬぐう。まあ、汗をかくことはないのだけど。
∀[わん太……]
◯[残念なお知らせっだが、それはただの雑魚スライムだ]
「……なんだって、あんなでっかいスライムが初心者ダンジョンにわらわらいるということかわん?」
◯[そりゃ、その、なんというか……]
∀[まあ、普通の
「薄々気付いていたけど、ボクは俺Yoeee系の
やはり、ボクのサイズ的に雑魚敵がボスラッシュになるのは中々大変そうだ。難易度調整がバグってる。
∀[
◆[絶対スキル補正乗ってたよね]
確かに、畳針でスライムに勝てるかと言われると普通なら厳しいだろう。
「ほら、内緒だけど、
それで、針の扱いに補正が乗ってる気がする」
◎〚配信で内緒とはw〛
◆[え、針での攻撃に『裁縫』スキルの補正乗るの何気に新発見なのでは?]
∀[まあ、だからと言って役に立つのはわん太と……
❤〚
「なにはともあれ、初モンスター討伐成功です!」
∀[そうだな、おめ!]
❤〚さすがわん太きゅん〛
◎〚おめでとー〛
一匹倒すのも大仕事だ。ダンジョン配信をしている
「今日のところはこれで引き返すよ」
ドロップアイテムの魔石を拾う。爪先位の小さな、と言ってもボクの掌ぐらいはある青っぽい石である。
ダンジョンの
「出口に到着ー。今日は初のダンジョン配信を見てくれてありがとう。
これからもダンジョン配信は続けていくつもりだから、チャンネル登録お願いね。
ではでは、ばいばいわ~ん」
◇〚またねー〛
◆[次のダンジョン配信待ってます]
◎〚おつかれー〛
―― 本日の配信は終了しました……
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