第1話 ライセンス

 初のダンジョン挑戦が不発に終わったボクは早速翌日にはライセンスを取得しに来ていた。

この世界にダンジョンが出来たのは13年前……ってリスナーの詳しそうな人が言ってた。

ダンジョンに入るには探索者シーカーとなる必要があり、無免許で探索を行うと罰せられることになる。

これは、ダンジョンが危険だからだけではなく、各種資源を得られる宝庫でもあるからだ。


 とはいえ、探索者シーカーになること自体はそれほど難しいことではない。

半日間の講習を受けて、協会員の担当の人に付き添ってもらってダンジョンに入り、初期ファーストスキルを獲得すれば良い。

探索者シーカー試験とは言うものの、滅多なことでは不合格にはならない。


「へー、わん太君って言うんだ。私もチャンネル登録することにするね」

ボクは協会員のおねーさんの膝の上に座らされて講義を聞いていた。

ちなみに、協会員とは探索者支援協会、通称探索者シーカーギルドの職員さんのことである。

広義には探索者シーカーも協会員でもあるが、普通は職員さんだけを協会員と呼ぶそうだ。


「わん太君はちっちゃいので、最初の層のスライム以外の魔物モンスターは厳しいと思うなー」

ちっちゃい言われた。事実ではあるが、ボクとしてはいささか遺憾である。

もっとも、ボクがスライム以外に勝てるかと言われるとよっぽど初期ファーストスキルに恵まれないと難しいのも事実だろう。

「ちなみに、最初の層にスライムがいるのは日本のダンジョンだけなんだよ」

日本のダンジョンのスライムはぽよぽよしてほとんど無害だが、他の地域のスライムはどろどろして殺意が高いらしい。

なんでもダンジョンや魔物モンスターは地域性があり、その地域の概念や認識がある程度反映されているとの研究結果があるそうだ。


「それでは、これからダンジョンに入ります。心構えは良いですか?」

「はーい!」

初ダンジョンである。いいね、初ダンジョンだ。テンションも上がる。

おねーさんが協会員のカードでゲートを開ける。

ライセンスカードはダンジョン内で魔力を通すことで有効化するため、ダンジョンに入って魔力を得るまでは使用できない。

なので、ダンジョンに入るには付き添い必須なのだ。


 洞窟風の入り口に一歩踏み出すと空気が変わった。

ダンジョンに入ったのがわかる。

「ようこそ、探索者シーカーの世界へ。

じゃあ、このカードに魔力を通してみて。

今なら魔力を感じることが出来る筈よ」

確かに身体の中に違和感がある。お風呂あがりに布団乾燥機で乾かした時のような熱っぽさ、これが魔力か。

なんとなく魔力を手に集めるように意識してカードを掴むと一瞬薄く光った。

「これで登録完了。カードの裏でステータスやスキルなんかがわかるよ。

あ、ステータスやスキルは基本的に他の人には明かさないようにするのよ」

「わかりました」

無事にライセンスカードも手に入れた。これで大手を振ってダンジョン配信ができる。

前回のダンジョン配信? あれはノーカンです。ボクは今日初めてダンジョンに入ったのだ。


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