最終話 ぶっころーさんが殺ル!

そうでした。ここは、本格的異世界ミステリーの世界(後付け)。


今までの話なんて、所詮、お飾り!伏線! 総てが、この最終回で……。

まだ、僕にもチャンスがあるのではないでしょうか?刺し違えるチャンスが!


フ……。2対……1か。

しかも、相手はライカンスロープと聖騎士です。


頭を使え!語呂合わせと知恵の本だ!

確か、この聖騎士は「アナリーさん」という名でしたね。


らいかんさんとあなりーさん。語呂合わせすると?

「61903(らいかんさん)と1763(あなりさん)ですね。合計すると……63666。」


63無残にも666悪魔の……やはり分が悪いですか。

知恵の本で確認しても……やはりダメか……それでもぉ!


ごめん……本屋の店長。

ごめん……YouTubeの眼鏡。

ごめん……でも、僕はこの狼野郎を殺らないと逝くに逝けない。


僕は、右手の羽を鋭く尖らせます。

左手には知恵の本に魔力を集中させ、魔法の詠唱を始めます。


―――ジリッジリッっと距離を互いに距離を詰める。

1歩……!。そしてもう1歩……!。



「逝くぞ! 今 あなた を 殺り マス ! 」



僕は、右手の羽を後ろに構え、大きく足を、らいかんさんの左脇に逆袈裟切りを仕掛けます!!!



―――ぎゃあああああああああああっ!!!!!



エルフの村に響き渡る断絶魔。

吹き散る朱色の鮮やかな血。

全身を震わせ激しく痙攣するからだ。


……前面に倒れる ライカンスロープ



そして……動かなくなる、、、らいかんさん。




 ◇


「……はて?僕は何をしていたのでしょう。」

見知らぬ森の中にある木塀に囲まれた村の前に僕は立っています。


「あれ?お前は野郎のらいかんさん!!どうしてこんなところに……」

「……倒れているのでしょうか?」


目の前に胸を貫かれて逝っているらいかんさん。

レイピアの先を深紅に染めて、剣を突いた体制から一歩も動かない聖騎士。


意識の戻った僕は、無残とも言える悪魔の所業……ライカンスロープ殺人事件のその瞬間を目の当たりにしている……ようです。


僕は何故ここにいるのでしょうか。

僕は何故こんな事件に巻き込まれているのでしょうか。


何も思い出せない。


何も思い……。


 ◇


――エピローグ


その光景を空からながら、ライカンスロープのらいかんさんが儚く呟きます。

「……3歩……歩きましたね。知恵の本……所詮。」


手は見える。腰回りもある。尻尾もある。でも、足がありません。

―――もう自分は。


「だから、仲間なんて信じられないのですよ……。特に聖騎士の馬と鹿の「んこ」踏む女子は……。」


もう。この場には長く居られないなと、らいかんさんは地の方へ進みます。

生物が、地母神の導きにより、その生涯を閉じ地面に帰っていくようにゆっくりと。


―――らいかんさんの魂が……地に向かって落ちて逝く。


 ◇


こうして、殺し屋ぶっころーさんは、今回無事、任務を達成させました。

「大事なこと」への記憶と引き換えに……。


彼の名前はR.B.ブッコロー。通称ぶっころーさん。

R.BのRはリアル、Bはブック、真の本。

真の名は、Rはらいかんさん、Bはぶっころす。


その真名の通り、Rらいかんさん を Bぶっころす 為に「謎の本屋」で作られた謎の殺し屋のみみずく(カツラふくろう)。

何時の日も、R.Bする凄腕の殺し屋。……終わらない物語の主人公。


 ※ ※ ※


物語というものは、ときに残酷で、ミステリーの闇の中で終わることもあります。

わたくしは、この物語の最期について、明確な説明と解説を用意しておりません。

ですけれど、わたくしは。皆様がこのお話を紡ぐため、幾つかの(ちんけな)伏線草こばなしを散りばめ、最善の答えに辿り着けるようお手伝いをしたつもりです。


それらが、読者の皆様にとって、ハッピーエンドに導いてくれたことを祈って。


 ◇


ぶっころーさんは、あなたの心とそこらの書店にいるのかもしれません。

もし、見かけたら、3歩以上歩かせてはいけませんよ……?何故なら―――。


本格異世界ファンタジックミステリー(後付け)

ぶっころーさんが殺ル[Fin]

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