第2話 ぶっころーさん第一異世界人発見!

左目の疼きが消えていきます。

不思議と左手に宿っていない何かの衝動も抑えられていきます。


「危なかった……僕が本気を出せばこの異世界が大変なことに……。」

脳内の思考は、まだ残念なようです。


視界が、徐々に開けてきます。

まだ、左目は少し回っていて眩暈を覚えますが、取りあえずは転移成功と言ったところでしょうか。


 ◇


ここは一体……。

日は落ちていて、夜のようです。


僕は、辺りを見渡します。

どうやら、森の中のようですが、獣道があり、少し進めば開けた場所に出そうな雰囲気です。進んでみますか。


左目だけが回る世界の不便さを払拭するように、一歩一歩僕は進み、開けた地に辿り着くと、そこには小さな村がありました。


 ◇


村の周りには、木の精霊トレントさんや可愛らしい蝶の羽を持った兵士の精霊さん。お馴染みの下半身が馬、上半身が鹿……人のケンタウロスが、村を守っています。


門番のケンタウロスに、話しかけてみますか。


「あの。すみません。ここは一体何処でしょうか?僕は異世界から来たみみずくのぶっころーさんと言います。」


ケンタウロスは、こちらを睨みつけながら槍を構えます。

「怪しいやつめ!ここが何処だと?ここはエルフの村。異世界のみみずくと言ったな!お前みたいな怪しいものを通すわけにはいかん!」


「ちょっと待って下さい。この村に迷惑をかけるつもりはありません。僕はただ、人の言葉を喋るライカンスロープを探してここまで来たのです。」


そう僕が言うと、ケンタウロスの表情が変わります。

何か考えているようですね。これは知っている?当たりでしょうか。


「喋るライカンスロープとな?先程、つい先程そんなのを見たような気がするのだが……思い出せぬ。」


「先程見た?思い出してください!名前はらいかんさん!武道家スタイルの装備をして、たてがみを自慢してくる嫌な犬野郎です。」


「らいかんさん……犬野郎?お?それはらいかんさんの事ではないか!そうかそうからいかんさんの知り合いか!ならこちらへ。」


1歩・2歩・3歩……ケンタウロスが数歩歩いたところでこちらを見ます。


「怪しいやつめ!ここが何処だと?ここはエルフの村。異世界のみみずくと言ったな!お前みたいな怪しいものを通すわけにはいかん!」


同じことを繰り返すケンタウロスに僕は混乱して答えます。


「え?え?え?ライカンスロープのらいかんさんは?」


「はぁ?ライカンスロープのらいかんさん?知らんな!俺の知っているらいかんさんは、ライカンスロープだぞ!」


やっべぇ。支離滅裂だ……。

こいつ……何で上半身「人」なのだろう。

下半身馬なのだから、上半身は鹿でいいじゃんね。どう考えても馬鹿でしょう。


―――僕がこいつを馬鹿だと見抜いた瞬間。


村の奥から、僕に話しかけてくる声がする。


 ◇


「そいつは、3歩歩くと忘れる(鳥の)脳の持ち主ですよ?相手をするだけ無駄です。人馬で馬鹿にもなれない残念なケンタウロスですからね。しかし……貴方も「懲りない」みみずくですねぇ。」


こ……この声!この聞き覚えのある声!

見つけた…。見つけたましたよおお!


今夜こそは、僕がお前をぶっころーす!

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