第5話
--翌日--
令菜は教室に入ると、唯がすでに座っているのを見つけた。
令菜は小さく手を振りながら、唯の席に向かった。
「おはよう、唯さん。」
「唯でいいわよ。おはよう、令菜ちゃん。」
「私も令菜でいいよ。」
「わかったわ、おはよう、令菜。」
令菜は唯の優しい笑顔に安心感を覚えた。
何気ない会話だけど、唯と話すことがとても楽しいと感じた。
唯がそばにいるだけで、令菜は幸せな気持ちに包まれる。
そんな中、ふとした仕草や表情に気づくと、不意に胸が高鳴った。
彼女はこれまでに感じたことのない、甘い緊張感を覚え、思わず唇を噛んだ。
令菜は自分が唯に惹かれていることを自覚し、少し照れながらも幸せそうに微笑んだ。
令菜は机の上に物をまとめていると、担任の五十嵐みのり先生が教室に入ってきた。
彼女は笑みを浮かべ、クラス全員に向き直り、口を開いた。
「今日は、皆さんに部活動の魅力を知っていただくための勧誘日です。ぜひ、自分に合った部活を見つけて、楽しい高校生活を送ってくださいね」
校内では先輩たちが新入生を勧誘しようと一生懸命になっていた。
「ねぇ、令菜、よかったら一緒に部活動見て回らない?」
「いいよ! でも、美術部に入るんだよね?」
「そのつもりよ、せっかくだから他の部活動もみたいじゃない」
「そうだよね、私もいろいろ部活動見てみたい」
令菜と唯は、校内を歩き回って様々な部活を見学して回った。
美術部、ダンス部、演劇部、体育会系の部活など、どの部活もそれぞれに個性的で、魅力的な活動をしていた。
美術部では、生徒たちは自分たちが描いた絵画や彫刻を展示していた。唯は熱心に絵画を見入り、「すごい、こんなに上手く描けるんだ」と感心していた。
令菜も思わず芸術の魅力に引き込まれる。
ダンス部ではダイナミックなパフォーマンスに魅了され、演劇部では熱演する先輩たちの演技に引き込まれた。
そして、演劇部に向かう途中に通りかかった茶道部のお茶会に誘われ、そこで出会った先輩から茶道の魅力を語られ、熱心に先輩の話に聞き入っていた。
一通り部活動を見終えた二人は食堂で食事をとっていた。
「こんなに部活動があるとみんな迷いそうね、令菜は何か興味のある部活見つけた?」と唯が言う。
「うーん、茶道部はちょっと良かったかも」
予想外の返答に、唯は驚いた表情を浮かべた。
「へぇー、どうして?」
令菜は少し沈黙した後、「・・・・お菓子が美味しかったから・・」と小声でつぶやく
またも予想外の答えに唯は目を丸くし、
「ふふふ、令菜ってかわいいわね」と思わず笑ってしまう。
令菜は、「もちろんいいなって思っただけで、入るのは美術部のつもりだよ。やっぱり唯は美術部に入るの?」
「うん、私は美術部に入るよ、先輩たちみたいに情熱的に自分を表現をしてみたいの」
「すごく素敵だと思う。私もそんな唯を近くで見ていたい」
「私も令菜が美術部に入ってくれてうれしい、そうと決まればさっそく入部届を出しに行こう!」
唯は令菜の手を握りしめ、それにこたえるように令菜も優しく握り返す。
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