第7話 景虎、怒られるⅠ

「・・・・・・・」


 彼女の言葉に少し困惑した。


「えっ、なんで、無言なの。お前、ボッチから普通の人にジョブチェンジじゃねぇか」


「なんですか。そのショボいジョブチェンジは」


「あの・・・。臼井君。それで友達の件なんだけど」


「ああ、すみません。うれしくてつい。不束者ですが、よろしくお願いします」


「ああーー、もうツッコむのも疲れた」


「それで、臼井君は、どうして私と友達になりたかったの」


「ああ、それは俺から説明する。お前が一人ぼっちで読書に勤しんでいるというのを耳にしてな。で、景虎は、ラノベ作家を目指しているんだ。やっぱ、女友達っていた方がいいと思ってな。こいつボッチだったから」


「ラノベ作家ね。私がラノベばっか読んでるのを知っていたの」


「いや、それは今知ったところだ」


 今でも驚いている。まさか、この読書ボッチ女がまさかのラノベばっか飛んでるとは、誰も思ってはいないだろう。現にまだ僕と、おそらく平静を装ってる信長君も驚いている。


「そうなのね。でも、臼井君は、ラノベってどんなジャンルを書こうとしてるの」


「学園系ラノベですかね」


「その心は」


 なぜだか、ドリンクをストローで優雅に飲んでいる彼女は僕になぞかけのような問答を要求している。僕は、それに素直に思ったことを伝えた。


「異世界ものとかだと、建物とか町の風景とかの描写って見たことがないから書きづらいかなっと思いまして」


「それで、学園系ラブコメね。まぁ、いいと思うよ」


「本当ですか。良かったです」


「それで、どのくらいラノベは読んでるの」


「十二ページです」


 彼女は目を真ん丸にしている。なぜなのか僕には知る由もないことである。


「・・・・・はい?」


「だから、十二ページです」


「十二シリーズじゃなくて」


 次は少し怒ってるように思える。なぜだろう、表情の忙しい人だな。しかし、大人である僕はそういうことを言うことはせず、彼女の聞き間違いを訂正してもみる。


「はい、十二ページです」


「ねぇ、久我君。友達なんでしょ。なんで、ラノベ作家になる人がラノベをほとんど読んでないわけ」


 なぜだか、その怒りが信長君に及んでいる。怒らないと死んでしまう病気なんだろうか。とても不思議な人だ。


「いや、俺も昨日話し始めたからな」


 信長君が千代に言われたことに無茶いうなと言わんばかりに汗が噴き出ている。


「ねぇ、それで書けると思ってるの」


「何とかなりますよ。こう見えても文章を書くのは得意なんですから。それにいくつかギャルゲーをクリアしてますからね」


「ギャルゲーって・・・。全く違うでしょ」


 千代は恐ろしく呆れている。頭に手を近づけていた。調子でも悪いのだろうか。少し、心配してもみた。


「似て非なる物だな」


 信長君もなぜだか憐れむような目を隣に座っている僕に向けている。

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