第26話前回の婚約2

  

 前回は残念ながら義姉上と第一王子との婚約を阻止できなかった。

 まあ、王家と公爵家の政略結婚だから直系でない僕は些かどころか、まったくと言っていいほど発言権がなかった。

 そもそも、公爵領は王都と距離がある。第一王子の実態を知らなかったからな。ボンクラ王子の本性を知ったのは学園に入ってからだった。


 アレを知った時は婚約を解消すべきだと思ったし、義父にも言った。

 けれど、「政治的判断で決まった事だ。お前も成長すれば分かる」と義父に言われて終いだった。

 何が政治的判断だ!

 こちらが何も知らないとでも思っているのか?

 寵愛著しい亡き王妃の忘れ形見第一王子を次の王にしたいという国王の親心でしかないだろ!!


 そのせいで義姉上の過酷すぎる「妃教育」が始まったんだ!!



 国王は亡くなった王妃を愛するあまり再婚すらしない現状では第一王子が「王位継承権第一位」だ。それでも「立太子」ができなかったのには理由がある。

 王妃が子爵家の出身だったからだ。

 本来なら王妃になれる立場ではない。

 その上、国王には辺境伯爵令嬢と婚約していた。にもかかわらず、国王は婚約者を排除して子爵令嬢を妃に迎い入れたのだ。当然、激怒した辺境伯爵家は王家と子爵家を訴えた。王家に金がないのは辺境伯爵家に多額の慰謝料と賠償金を支払ったせいだろう。王妃の生家である子爵家は慰謝料を払いきれず領地と爵位を売り払い一族は国外逃亡したと言われている。

 

 王家の信頼は地に堕ちた。

 それでも王家が維持できているのは国王陛下の魔力が桁違いに多いせいだ。類稀なる魔力を持つ国王は王妃と王子の事が絡まなければ名君だと言われている。もっとも、恥をかかされた辺境伯爵家の恨みは未だに凄いらしい。まあ、無理もない。王家相手に金をむしり取ったところで令嬢の醜聞は付きまとう。国王に捨てられ、傷物とされた理不尽さ。年頃であった令嬢は結婚相手が見付からなかったため、領内にある修道院に入ってしまった。

 北を守護する辺境伯爵家。

 かの家の領地は公爵家よりも広大だ。

 しかも魔獣討伐は辺境伯爵家が一手に請け負っていた。そう、王領に最も近い辺境の地を守っていたのだ。義に篤く武勇を誇る辺境伯爵家の堪忍袋の緒が切れたのも仕方ないだろう。王家が辺境伯爵家を怒らせた結果、王領に魔獣が出没するようになった。まあ、それ自体は国王自身の魔力結界を張る事で終結したようだが少なくない被害がでたのも確かだ。王家は辺境伯爵家にナニカを言う事は無かった。まあ、言った処で今までは本当に好意で魔獣狩りを請け負っていただけなのだから文句なんて言える立場ではないし、そんなことを言えば更に貴族達の王家を見る目は厳しくなる。辺境伯爵家の件があって、地方貴族達は挙って王家を見放している状態なのだ。


 うちの公爵家も見放したい。





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