第25話前回の婚約1

 一年後――



 僕と義姉は十一歳になった。

 二年後には学園に入学だ。


 

「おかしい……」


 ポロリと独り言が漏れる。


 前回なら既に義姉上は第一王子の婚約者だったはず。それなのに、何故か義姉上は未だにフリーの状態だった。


 まあ、個人的には第一王子と婚約なんてして欲しくない。

 あの第一王子は『ボンクラ』だ。

 しかも、思い込みが激しい。一度「こうだ」と思ったら軌道修正はまず無理だろう。間違っていると分かっていても己の過ちを決して認めない。最悪の男だ。これで文武に秀でていればまだ話は別だったろうが、勉強は中の下で剣の腕前もイマイチ。じゃあ、何が得意なのか?と逆に聞きたいほどの酷さだ。


 この僕だって公爵家の跡取りとして必死に勉強した。クズの家庭教師相手にね。それこそ、寝る間も惜しんで勉強した。過去形なのは「前回」の事だからだ。前は本当に一に勉強、二に勉強、三四に勉強といった勉強三昧の幼少期だった。その上「男子」だからという理由で剣術の稽古まで入っているんだから溜まったもんじゃない。「出来ません」なんて言える雰囲気じゃない。


 公爵家の僕ですらこうなんだから当然、王子はもっと厳しい教育が課せられるはず。帝王学というものを。


 そう、普通なら厳しい教育を受けている筈の第一王子。


 ボンクラ王子は王子教育が始まった段階でハンストを起こした。王子がハンストって何だよ?と当時は思ったが馬鹿は妙なところで頑固だった。そして自分の事に関しては一切の妥協をしなかった。王子のハンストは一週間続いた結果、王子教育は愕然と減ったのだ。その意地を別の処で発揮すればいいものを……。


 我が子可愛さにしか受けさせなかった国王陛下の落ち度としか言いようがない。まあ、最初は厳しい教師を付けていたようだけど王子が癇癪起こして辞めさせてからはずっとからの教育だ。ここで母親の王妃が厳しくすればいいんだろうけど、残念ながら王妃殿下は既に亡くなっている。だからかな?国王陛下は第一王子が可愛くて仕方がないらしく、何でもかんでも望む通りに叶えて甘やかした結果がボンクラのアホ王子の出来上がりだ。


 はあ~~~っ。

 親バカも大概にして頂きたい。

 そのせいで前なんか義姉上が王子の代わりに帝王学を学んだくらいだ。あれだ。ボンクラ王子の代わりに実権を握ってくれって奴だろう。まったく!それは王太子が学ぶもんだろ!!前は義姉と婚約したお陰で「王太子位」になれたんだ。そこで奮起して頑張るのが筋ってもんだろ!!バカたれ!!!


 ボンクラ王太子のせいで有能な義姉上の貴重な時間を奪ったんだ。これは罪と言っていいレベルだよ。

 ああ~~~。もうっ!思い出すだけでイラつく!!!!


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